SamuZai
shiogohan
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レトロなおでかけ

初夏、停車中のマイカーに家族四人、こもった空気にじっとりと汗が滲んでいく。事情が事情であるだけに窓も開けられず、ああ、こんな時のために、少し高いがクーラー付きにしておけばよかったと思うも、今となっては後の祭りであった。 汗だくの私のすぐ目の前、フロントガラスの向こうを、おめかしした別の親子連れが楽しそうに横切っていく。目的地は十数メートル先の百貨店だ。ああ、あそこに入ってしまえば、中はさぞ涼しいだろう。 ――だというのに、運転席に座った私の背後からは、先ほどから飽きもせずパチン、パチンという規則的なお尻叩きの音と、ドタバタと足を振り上げて抵抗する振動が響き続けている。 ちら、とミラーに目をやれば、左右反転した妻と下の息子が、それぞれ額に汗してお仕置きに励んでいた。 「なあ、それは買い物を済ませてからじゃダメなのかい?」 せめて走り出して窓を開けてしまえば、風が吹き込んで涼しくもなるのだが、残念ながらまだ肝心の買い物は終わっていなかった。休日の正午前、混雑する百貨店の駐車場に陣取ることができるのは、もはや奇跡的な確率であるから、ことが済むまでは軽率に動くわけにもいかない。 「ダメ!こういうのはすぐに躾けてあげないと!」 いつの間にか、随分と逞しくなった腕を振り上げながら愛しの我が細君は宣った。 「子供なんて、わがままを言うのが仕事じゃないだろうか」 百貨店に到着し、まずは食事を済ませてから屋上遊園で子供たちを適度に疲れさせ、もとい、喜ばせて、扱いやすくしたところでじっくり買い物を…と、計画していたのだが、よせばいいのに下の子は通りがかりのおもちゃ売り場で、一度も叶った試しのない駄々をこねて、そのまま車にUターン。 「だからお仕置きはっ、親の仕事なのっ、今のうちにっ、こうやってしっかりっ、お尻に教えてあげないとっ、そんなの通らないのよってね!」 妻は返答しながらも、その節目節目で容赦ない平手打ちを下の息子のお尻に入れている。派手な泣きっぷりに思わず目をやると、かわいそうに、すでに桐箱入りの桃より真っ赤なお尻になっていた。些細な駄々が高く付いたものだ。 「いやあほら、こいつもそろそろお腹空かせてるだろうし」 レストランも満席になってしまうから、その辺で切り上げて……と、続けようとして助手席を見ると、上の息子は慌てて立てた人差し指を自分の唇に押し当てていた。 (ダメだよ、逆らうと怖えーんだから。パパもお仕置きされちゃうよっ!) 今度は人差し指を頭に持っていき、声を潜めての忠告。ありがたいことだが、今の発言は君の方が危険だぞ、おそらく。 「聞こえたわよ!これが終わったら、あんたもお膝に来なさい!!」 ほら、言わんこっちゃあない。泣きそうな顔の上の子の頭を撫でてやる。まあ、このくらいならそうは酷く叩かれまいが…。それにしても、涼めるのはまだ当分先になりそうだ。 ※発掘。昔の特撮を見たかなにかで、休日はわざわざおめかしして家族でデパートに買い物に行くような、そこそこ昔をイメージして書いたらしきものです。エアコンなしは地獄なのでは…? と、思うも、温暖化がそこそこ問題にされつつあった私が子供の頃ですら、30~31度足らずで、日射病に気をつけろ、帽子被って行きなさいと心配される程度には、今より過ごしやすかった気がするので、更に前ならきっとなんとかなったのでしょう…たぶん。

Comments

ありがとうございます!載せてみてよかったです!!

しおごはん

あぁ……情緒を感じる描写が素晴らしいです!読めてよかった…!

山田こたろう


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