SamuZai
shiogohan
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音に関する三つの掌編

一、なんらかの訓練施設  鞭の音が響く中、僕は頭まで布団を被り自分の意識がすっかり夢の中に旅立ってしまうのを、今か今かと待っていた。だが、この分じゃ到底眠れやしない事はなんとなく分かってしまって、また空がぼんやりと明るくなるまで眠ることができず、そのままふらついた頭で訓練を受けて、明日はきっと僕も昼間にみんなの前で鞭を受けるのだ。そして、それがあまりにも続くと、今、名も知らぬ仲間が受けているような夜通しの懲罰になる。噂では、訓練の疲れとあまりに痛みに気を失っても、冷水を浴びせられたり、腫れ上がり皮の向けた尻に塩を擦り込まれたりして、また鞭打たれ、文字通りに叩き起こされるらしい。ここではそれが、みんなにとって明日は我が身だ。それが実感できた日から、歳なりの無邪気さはどこかへ行ってしまう。誰かを陥れようとか、揶揄おうとか、悪戯しようとか、そんなありがちな悪ふざけもバレてしまえば、こうなるとわかると、誰もやらなくなる。昔の学校ではあんなに意地悪だった腐れ縁のヤツも、ここに入ってからは人が変わったように大人しく真面目になった。もっともそれは、数々の昼の鞭打ちと深夜に渡る懲罰を受けた後だったが……。 二、アパートの隣室  安普請の我が家の隣に家族連れが越してきた。まあ、古い木造の建物だし多少の煩さは覚悟していたが、この音は予想外だった。バチン、バチンと明らかな体罰の音と、泣きじゃくる女の子の声。おいおい、お尻を叩くような歳じゃないだろうと内心突っ込みつつも、正直、お隣さんは関わりたくもない雰囲気を醸し出しているタイプだ。出会い頭の愛想はいいんだが、どこか影がある。玄関ドアの前に散らばった私物、朝に出会しちらっと見えた荒れた室内。そして、毎夜毎夜の金切り声と折檻の音。児童相談所にでもいえばいいのか、その前に大家に苦情を出して、一言言ってもらうか。だが、どうやら俺を含めて大抵の人は、こういう時はこう考えるみたいだな。丁度いい機会だ、こんなところさっさと引っ越してしまおう。 三、他の教室  小テストの時間。静まった室内にカリカリとペンの走る音や、時折、小さなため息や咳払いが反響する。先生の答案に丸をつけるサインペンの擦れる音と同じか、それより少し大きいくらいの音量で、どこか遠くの教室から、パチーンというビンタの音が薄ら聞こえた。私含めて背中でビクッと反応する子もいれば、我関せずな、あるいは本当に気づいていないのか目の前の問題に集中している子もいる。滅多にあることではないが、経験したら忘れられないあの痛み。叩かれたことのある子はつい敏感になって、頬のジリジリとした感じや、みんなの視線が集中した恥ずかしさやバツの悪さを思い出してしまうのだが、傍観者は好奇や同情の目を向けて終わりなのだった。パチーン、パチーン、と二、三回目の音が続く。そこで黙々と丸つけをおこなっていた先生がぼそっと、派手にやられてるなと呟いた。その顔は平静を装っていたが、なんだかほんの少しだけ嗜虐的な微笑みを含んでいるように、私には見えたのだった。  


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