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幼なじみが俺で、俺が俺の妹で(9)

 入れ替わって半月ほどが過ぎた。  俺は『光莉』として二度目の中学一年生を始め、瑠璃は『俺』として中学二年生になり、二人で文芸部に所属している。学校生活は非常に順調だ。  ただ、その日の俺は最悪の気分で目を覚ました。 「ちょ、ちょっと、みっくん痛いよ……」  朝勃ちした瑠璃のチンポをしごく手つきも荒々しくなってしまい、瑠璃の苦痛を訴える声で我に返る。 「わ、悪い……」 「今朝はどうしたの?」 「始まっちまった……生理」 「あ……ごめんね、気づいてあげられなくて」 「しかたないよ。今の瑠璃は男だし」  言ってしまってから、これ嫌味だよなと気づいた。 「ご、ごめん」 「ううん」  なのに瑠璃は軽く受け流すように、俺の手を自分のチンポから外した。チンポは勃起していたが、射精しなければ収まらないほどいきり立ってはいなかったから、しばらくすれば鎮まるだろう。 「無理はしないで。わたしなら大丈夫だから。今日は休む?」 「……行く」  光莉は生理で休んだことなんてない。  それでも、学校でいつも通りに過ごすのはなかなかしんどかった。  男なのに生理になっているという現状がさらにつらくて、あたしは『光莉』の記憶に身を任せるようにしてやり過ごした。  あたしの生理は短いけど重いようだと、去年からの経験と周囲への情報収集で悟っていた。  一方、瑠璃ちゃんは短くて軽いみたいで、うらやましかった。『あたし』が瑠璃ちゃんになったのは、この気持ちもいくらかは関係していたのかも……などと、痛みでぼんやりした思考の中、少し考える。  そんな中、今日は保健の授業があって、性の違いなどについて教わった。去年もお兄ちゃんとして同じ授業を受けたはずだけど切実さが違う。あたしは苦痛の中でもどうにか意識をしゃんと保って授業を受けた。  今の身体について、少しだけわかったような気がした。  授業は乗りきったけど、部活に出る頃にはもう限界に近かった。  空き教室を利用した部室には、あたしと『お兄ちゃん』の瑠璃ちゃんしかいない。あたしは椅子に座り込むと机にぐったりもたれる。  と、じわじわ痛み続けるお腹を優しく撫でられる。 「……瑠璃ちゃん?」  いつの間にかあたしの隣に椅子を持ってきた瑠璃ちゃんが、あたしのお腹をいたわるように撫でてくれていた。 「気休めだけど……いい、かな? 嫌だったらやめるけど」 「ううん、続けて」  それだけ言ってから、「ありがと」と小さく付け足す。  誰かに見られたら変に思われちゃうかな、と頭の片隅で考える。でも、お兄ちゃんが妹の介抱をしてるってことだし、いいよね、とも思う。  あるいは、彼氏が彼女の……って、何考えてるんだろ、あたし。  頭の中で変なことが渦巻いてるあたしに、瑠璃ちゃんは声を掛けてくれた。 「初めては誰でも不安だよね」 「瑠璃ちゃんも?」 「もちろん」  微笑む瑠璃ちゃんは、お兄ちゃんの顔なのにすごく瑠璃ちゃんらしかった。  学校にいた時間帯が一番きつかったようで、帰宅した今も楽ではないけど「さっきまでに比べればマシ」という気持ちでどうにか意識を立て直せていた。  今日も風呂は休まなかった。  そもそもこういう時に風呂に入って大丈夫なのか不安ではあったが、記憶の中の光莉は風呂を休んでいないし、入る前に瑠璃に確認しても「おうちのお風呂だから、別に不潔じゃないし気にしなくていいよ」と言ってくれた。  瑠璃の「体をよく温めた方がいいかも」という言葉に従い、今日はまず、湯船に浸かる。入浴剤も相まって、血行が良くなり全身のこわばりがほぐれていくような気分になっていった。 「……女の子って、大変なんだな」 「そうなんだよ。みっくんもこれから二年間がんばってね」  一緒にお湯に浸かりながら瑠璃が笑う。 「逆に二年間、瑠璃は生理と無縁でいられるんだな……」 「うん。そう考えると気が楽。入れ替わってよかったかも」  思わず皮肉気味にこぼすが、瑠璃はすごく素直に肯いた。 「って、別に男の子になりたかったわけじゃないけどね」 「う、うん」  ひとまず肯きながら、俺は今の瑠璃の言葉からあれこれ考えてしまう。  今の俺は女で、今の瑠璃は男なんだなと、今さらながら意識してしまった。  今の俺の体の中には卵子があって、今の瑠璃の体の中には精子がある。瑠璃の精子が俺の中に入ってきて卵子と結合したら、俺が妊娠しちゃう。  セックスしたら、そんな風になりかねない。  入れ替わってからこれまで、あまり深く考えないようにしてきたこと。でも今日の生理は俺に、男女とか妊娠とか、そういうことを改めて教え込んでくるようだった。  男だった去年の夏から、俺は射精を覚えていた。大人の男になった気がしていた。でもそれは相手のいない一人遊びで、男と女の関係というのは、女という相手がいなくちゃ始まらない。  そして女になってわかったけれど、女は男に比べるとずいぶん力が弱い。スケベでバカな男が本気を出してしまったら、抵抗なんて難しいほどに。  俺たちは入れ替わっているんだし、普通の女と男とは違う。それに瑠璃はお兄ちゃんで、俺は妹なんだから、変なことにはなるわけないと言い聞かせる。  でも、それでも、ちょっとだけ……瑠璃を、『俺』を、怖いかもと思ってしまった。 「る、瑠璃。そろそろ抜こうぜ」 「え? もう少し浸かってからでよくない?」 「いいから」  まるっきり光莉が普段そうしていたような駄々をこねて、瑠璃を引っぱり出す。  瑠璃を座らせ、チンポを弄る。俺の手の中で、俺のものだったチンポが硬くなっていく。  瑠璃を怖がりたくない。だからこそ、俺は瑠璃のチンポをコントロールできると思いたかった。  気持ちよくなってもらう。持て余した性欲を、不意に俺に向けてこないように。  こんな変なことを考えるのは、きっと初めての生理で不安になっているからなんだ。慣れればもっと落ち着いて、このおかしな状況にまた順応できるんだ。  頭の片隅でそう考えつつも、俺は瑠璃を派手に射精させた。


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