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幼なじみが俺で、俺が俺の妹で(15)『プールと水着』

「んー……」 「どうしたのみっくん」  放課後、二人だけの部室でうなっていると瑠璃に心配された。 「その、クラスの友達に市民プールに誘われて、来週行くことになって……でも俺も光莉もあのプールに行ったことってないし、そもそもあまり水泳が得意でもないし、ちょっと気が重い」 「ああ、あっちはうちの辺りだと遠いものね」  瑠璃が言うように、小学校の頃はあの辺は行動範囲から外れてたんだよな。そして『光彦』にはインドア系の友達しかいなくて、中一の時にも誘われなかった。 「そっか……光莉ちゃんの水着ってどうなってるの? 学校用ので行くわけにもいかないんじゃない?」 「あ、それも問題か。早めに買いに行かないと……」  俺が言うと、瑠璃は少し考えてから言った。 「じゃあ、今日買いに行こうか。その足で、予行演習にも行っちゃおう。学校のプールももう少しで始まるしね」 *  バスで駅ビルへ行き、三階のファッションフロアへ。二人で水着売り場にやって来た。  まずは、瑠璃が海パンをすぐに買う。  会計を済ませた後、瑠璃が小声で言った。 「男性用の水着って、買うの簡単だね。サイズを間違えなければ、あとは色や柄の好みで決めるくらいだから」  同意だが、それはつまり、女性用の水着は買うのが簡単でないということでもある。  女性用の水着売り場に足を踏み入れると、微妙な居心地の悪さを感じた。  今の俺は『光莉』だ。中一の女子だ。ただ本来の俺は光彦で、つまり本当は男で、その自意識が俺を落ち着かなくさせる。  隣の瑠璃からも似た雰囲気を感じる。こちらは元は女の子だけど今は『光彦』で、中二の男子にとって女性用水着売り場なんてこの世でトップクラスのアウェーだ。 「みっくん……わたし、外で待ってていいかな」  元女子であっても、周囲からの無言の圧力はどうしても感じるのだろう。瑠璃が小声でそう言ってきた。  でもそうなったら、俺が一人で水着を選ぶという高難易度のミッションを強いられてしまう。 「お兄ちゃん、アドバイスお願いね!」  俺はいつもより心持ち声を張ると、『お兄ちゃん』の腕をがっちり掴む。  瑠璃は見たことのない悲壮な顔をした。  色と柄を選ぶのは男子用と同じ。けれどそこに、ワンピースタイプかビキニかパレオかタンキニかといった形状の問題が加わる。  俺の場合は、光莉の好みに合うかという問題もある。今は俺のものだけど、再来年には光莉のものになる水着。その時にサイズ的に着られるかはともかく、今の俺が友達と遊ぶことは将来の光莉の思い出になるわけで、その思い出が変な水着とともになるのは嫌だろう。  そして見た目が良くても着心地の問題もあり。  試着室へ何度も入る羽目になった。 「試着したら買わないといけない気がする……『光莉』の感覚に従えば、どんどん試そうって気分にもなるんだけど」  俺が言うと、瑠璃も苦笑する。 「試着してみないとわからないことってあるから……わたしも、みっくんの感覚だと着た以上は買わないと申し訳ないみたいな気持ちが湧いてくるけれど」  言ってから付け加えてきた。 「ただ、その、試着はどんどんすべきだけど、スピードアップはして欲しいかな……。みっくんが中にいる間、外で一人で待ってると、ますますいたたまれないから……」  そんなこんなの末に、俺は可愛らしさの強い花柄のワンピースタイプを選んだ。 「わたしは、すごく似合うと思う」 「俺も」 「ただ、光莉ちゃんはこういうの、こどもっぽいって考えない?」 「うん。『光莉』は確実にそう言う」  瑠璃みたいになりたいって願った結果が現状の一因だしな。 「ただ、『光莉』の内心は、まだまだこういうのが好きらしい」  妹の内心にアクセスするなんて、我ながらどうかとは思うけど、最近の俺はこんな風に『光莉』の心の底にあるものも読めるようになっていた。  それってつまり、瑠璃も『俺』の心の底まで読めるのかも……と考えると、少し不安になってくるけれど。 *  ともあれ買い物を終えて、俺たちは当の市民プールにやって来た。  ただ、着替えてプールサイドで合流すると、今度は瑠璃の様子がおかしい。  瑠璃は水泳に関してはわりと得意で、だから今日も予行演習なんて言い出したのに。 「どうしたんだよ腕組みなんてして」 「その……胸見せるのって、恥ずかしくて……」 「あ」  そうだよな、上半身裸になるなんて、女の子として生きてきた瑠璃にとってはありえないことだ。  たとえあの大きなおっぱいがなくなっても、女の子の自意識はそうそう消えはしないだろう。 「いや、でもプールの授業のたびに腕組みはおかしいだろ」 「そうだよね……どうしよう?」 「慣れることが一番なんだろうけど、その、今日はひとまず思い込んでみようか。今の瑠璃は男なんだから、男っぽくしてておかしくないって」 「わ、わたしは男、男……」 「そう、今の『お兄ちゃん』は立派な男の子」 「わたしはお兄ちゃん……」 「毎晩射精してる、れっきとしたスケベな男」 「わたしはスケベな男……」  そんな話を小声でしている俺たちの横を、セクシーな水着姿のきれいな女の人たちが通り過ぎていった。 「お兄ちゃん!」  瑠璃が、『俺』の顔でとは言え、あんな鼻の下伸ばした表情をするのは見たくなかったよ……。 * 「な、何か今日は……」 「言わないで。お願い」  その夜、風呂で握りしめた瑠璃のチンポはいつも以上にでかくなっていた。

Comments

コメントありがとうございます。 瑠璃の変化は、自己暗示をやりすぎたところにタイミング悪く……という感じで、流していただければ。 光莉に関しては、肯定しても否定しても終盤のネタバレになりますのでご勘弁ください。

すごくいいです。 現光彦がすけべじじいで 現光莉は守ってあげたい少女で 戻った時はやっていけるのでしょうか? ただ40話中15話とのこと ますます深みにはまっていってください。 楽しいです。 元光莉の性格からいって すんなり戻るとは・・・。 この作品の肝ですよね。 素敵な作品 ありがとうございます。

丸井主将


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