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幼なじみが俺で、俺が俺の妹で(29)『二人の二度目の文化祭(後)』

「一美の視点だと、こんな風に見えていたんですね」  瑠璃の原稿を読み終えた苑田さんが言った。  瑠璃が去年から書き進めていた、入れ替わりもの児童書の元女子視点二次創作。今年の文化祭で出す部誌で、後半を完成させて発表することになった。  その原稿がかなりの割合を占めていて、他は俺の恋愛小説とか、新入部員たちのショートショート。その中で苑田さんは、短編と言っていい分量を書いている。  編集作業にも興味があるということで、彼女は一年生で一人だけ積極的に残って、俺たちを手伝っている。 「苑田さんもあの本読んでたんだね」  瑠璃が少しうれしそうに言い、苑田さんが「ええ、面白いですよね」とはにかむ。  ただ、俺は厳密にはそうでないことを知っている。この前、苑田さんが去年の部誌を見てから、俺に元ネタを訊いてきた。「あれってちょっとエッチな話なんですよね?」と俺に訊ねる声には、隠そうとしてわずかににじみ出る侮りみたいなものが含まれているように、俺は感じた。  でもそれは邪推かもしれなくて、現にこうして瑠璃に話しかける苑田さんにはあの時の雰囲気はなくて、なら読んでみて意見が変わったのかもしれなくて、俺は瑠璃には何も言ってないし今後も言うことはないだろう。  ――それにしても。  編集作業を進めながら、俺は内心で思う。  一美が『一夫』に染まっているように、瑠璃も『光彦』に染まっているのかな。  俺は『光莉』の影響を受けている。女の子の感覚にどんどん近づいている。だから瑠璃もそうなって何も不思議はない。日々の手コキにはすっかり馴染んでいるのだし。  でも、俺は元に戻りたい。だから、瑠璃も元に戻りたいと考えているはず。  この二次創作だって、最後には元ネタの展開をなぞって、入れ替わった二人は元に戻っている。  途中で一美は男の感覚にだいぶ引きずられているけど……そもそも、この話を去年書き始めた時点で、この後半のシーンを瑠璃が書きたかったかどうかはわからない。去年前半を書いたから、今年はきちんと終わらせようと、書きたくない部分も書いたのかもしれないし。  瑠璃は一美と同じようになっているのか、違うのか。  瑠璃と直接話せば疑問は解決する、はず。でも、話しても瑠璃が本当に思っていることを言うかはわからない。俺に向かって、男のままでいたい、『光彦』のままでいたいなんて、瑠璃が言うわけはないのだから。  なんでこんなことばかり考えてしまうんだろう。  瑠璃が書いたこの話が、変に心をざわつかせるからだ。それだけ。  俺は気を取り直して、一年生たちの原稿をどう並べるか考えることにした。  † † †  一夫ちゃんが逃げるように帰っていった後、あたしはトイレに向かった。  心も頭も後悔の念でいっぱいのはずなのに、パンツの中ではチンポがはち切れそうになっていた。  あたしが学校を休みがちになった四つ目の理由と言えそうなのが、このチンポを持て余していることだった。  射精を覚えたてだった頃は、一度抜けば一日くらいはチンポが鎮まっていたような気がする。でも次第に回復が早くなってきて、夜に抜いても翌日の学校で勃起しかねない。もしそれを誰かに見られたら、『一夫』の評判が最悪になることは確実だ。  あたしは朝晩射精するようになっていた。学校を休んだ日には朝昼晩の三回ということもある。  射精するたびにあたしは女子から遠ざかっていく気がする。  でもどうしてもやめられなかった。  今もそうだ。一夫ちゃんを傷つけたことを気に病んでいるはずなのに、『一美』のおっぱいに触った時の感触やキスした時の興奮を思い出して、チンポは射精したいと強く訴えてくる。あたしはそれに逆らえない。  便座に腰掛けて、硬くなったチンポを握るとしごいていく。  入れ替わらなかったら一生知るはずのなかった快感が、あたしの手をさらに動かす。  あたしは一美として一夫ちゃんが好きなんだろうか。  それとも一夫として『一美』が好きなんだろうか。  答えは出ないまま、あたしは今日二度目の射精をした。  ☆ ☆ ☆  帰宅した後、わたしは自室に入り、小説投稿サイトの下書き専用ページでみんなに見せるわけにいかない部分を書き足していった。  原作というべき児童書では、主人公の元男子が生理を経験すること以外、下半身の問題はほぼ扱われない。  でも元女子が射精をかなり経験していそうだと、わたしは思っていた。  もちろん、小学生の時に読んですぐそう思ったわけではない。けれど、自分が入れ替わってみっくんの身体になって、その日から今日まで毎日射精し続けて、今では半ば確信していた。  小学六年の女の子が、気になる男の子と身体が入れ替わって、自分一人になる時間がかなり存在していて、オチンチンを弄らないわけがない。なら、射精だってしないわけがない。そこまでは、去年の時点ですでに書いていた。  だから後半の、元女子が学校を休みがちという時期なんて、絶対毎日何度もやっている。終盤のあの強引なキスシーンもそれがきっと関係している。そう考えたから、わたしはあのシーンをあんな風に書いた。  でも根底にあるものは中学生が学校の文芸部で発表できるようなものではない。だからといって、書かずに済ませるのはわたし自身が納得いかない。なので、誰に読んでもらう当てもなく、わたしはここに書いておくことにした。  あるいはいつか、みっくんに読んでもらえるだろうか。  だけど、絶対に今じゃない。  こんなものを読ませたら、わたしは男子の生活を望んでいると誤解させかねない。元に戻ろうというみっくんの考えに悪影響を与えてしまいかねない。  射精は気持ちいいし、みっくんの身体は『わたし』の身体と違ってスポーツが得意だし、男子との友達づきあいもわたしの性には合うみたい。『瑠璃』の人生が嫌いなわけはないけれど、『光彦』としてもわたしはちゃんとやっていけそうな気がする。  でも、この身体も人生も、みっくんのものなのだから。  文章を書いているうちに、股間はひどく勃起していた。  わたしは、お風呂でみっくんに抜いてもらうために部屋を出た。

Comments

「同居してる兄妹」だから、こんなおかしな状況になったとも言えるんですよね。 我慢し過ぎたら却ってよくなかったのか、やっぱり今のように毎日こうだから馴染んでしまったのか、その辺もまた悩ましいところですよね。

肉体同志は兄妹ですものね。 流石に自制できるでしょうが もし血がつながってなければ 思わず・・・ということも。 ムラムラを押さえすぎると もっと男性化がすすむかもですね。

丸井主将

こちらでもありがとうございます。 光彦視点の話という意識がちょっと強すぎたかもしれないなと、遅まきながら反省しています。 瑠璃も最初のうちは普通に、男子生活のあれこれに困惑したりショックを受けたりしていたのですが、いつの間にやらという感じですね。

引き続き ありがとうございます。 現「光彦」 葛藤 いいですね。 本音が知れて嬉しい。

丸井主将


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