SamuZai
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幼なじみが俺で、俺が俺の妹で(35)『結ばれる二人・その一』

 現実へと感覚が戻る。寂れた神社の賽銭箱の前。自分を含めて二人しかいない境内。  目の前に、男の子が立っていた。 「みっくん……」  俺は、男の子に向かってそう口走っていた。  言った次の瞬間、おかしいとは気づく。目の前にいるのは『俺』なんだから俺がみっくん呼ばわりするのは変だし、中身は瑠璃なんだからこれまたみっくん呼ばわりするのは当てはまらない。  でも心の中から湧き起こる気持ちを表すには、「みっくん」という呼び方が一番ふさわしかった。  心の中を、二年前までの瑠璃が抱えていた気持ちが荒れ狂っている。  みっくんが好き。  大好き。  小さい頃からずっと変わらず好きでいて、この人がわたしの恋人になって、いずれ夫になるんだと自然に思っていた。  離れたくない。引っ越しなんて本当は絶対に嫌だ。わたしは臆病で、みっくんに告白なんてできなくて、そのせいでこんな気持ちも表に出すことはできないけれど、引っ越しについて聞かされてから内心では常にそう思っていた。  だからわたしは。  ――みっくんとずっとずっといっしょにいられますように。  そう二年前に願って……  瑠璃の記憶はそこで途切れるけれど、その記憶を受けて、俺は二年後の『みっくん』を見て、思う。  みっくん、この二年でもっともっとかっこよくなってる!  背が伸びて、体格はほどよく引き締まって、顔立ちは大人っぽくなって、でも優しい落ち着いた雰囲気もあって、すごく素敵な高校生になっていた。  そこまで思ってから、どうにか意識がコントロールを取り戻してくる。俺は光彦。身体は瑠璃だけど、瑠璃の記憶も大体読めるようになったけど、光彦。言い聞かせて、どうにか我に返った。  瑠璃が、俺のことをこんなに好きだったなんて思ってなかった。  俺だって瑠璃のことを好きだったけど、それはエロ目線もかなり含んでいて。ここまで純に一途に好かれているなんて思ってもいなかった。  その思いの強さに気圧されて。  でも、俺は、もちろん、うれしかった。  目の前の『俺』も、こっちと似たようなことになっていたのだろうか。棒立ちで俺を見ていたのが、ようやく動き出す。 「瑠璃、う、ううん、みっくん……」  瑠璃は俺より少しだけ意志が強かったのか、途中で言い直した。 「瑠璃も、俺の記憶を見ちゃったんだ」  俺が確認すると、瑠璃は肯く。 「みっくんは、わたしの記憶を見たんだね……」 「う、うん」  隠していた相手の気持ちをお互いに知ってしまって、気まずさはある。  だけど、喜びと安堵が勝った。 「俺は瑠璃が好きで」 「わたしはみっくんが好き」  口に出してしまえば、こんな簡単なことだったのに。もちろんこれは、互いの気持ちをわかったという異常な状況だから容易にできたんだけれど。  どちらからともなく手を伸ばし合い、抱きしめ合う。  俺と瑠璃は――『瑠璃』と『光彦』としてだけれど――、キスをした。  これ、ファーストキスだよね。  瑠璃にキスされながら思う。  すごく、幸せ。  大好きな瑠璃とキスしてる。  大好きなみっくんとキスしてる!  ……あれ?  自分の心の動きに戸惑っていると、みっくんが新たな動きを始めた。  わたしの唇を割って瑠璃の舌が入ってくる。  こ、これって、すごくエッチな気がする……。  思いながらも、俺もそれを受け入れる。みっくんと、舌を絡め合う。唾液を交換するように長く長くキスを続ける。  たくましい瑠璃にしがみつくような感覚。俺は女子としては少し背が高いけれど、それでも男の子とは全然違うんだなと改めて実感する。少し腕を動かして姿勢を直す。  どうもそれが刺激になったようで、みっくんは両腕でわたしの身体を少しずつまさぐり始めた。  背中を撫でられるのは悪くないし、頭を撫でられるのはうれしいけれど、お尻にまで手が伸びると、こんなところでそれはちょっと……。  瑠璃ってこんなにエッチだったっけと思う。  あ、でも、今のみっくんは俺の二年前までの記憶も混ざり込んでいて……そもそもこの二年間、男の子として毎日射精してきて……。  けどこの前までのあたしには何もしてこなかったのに……って当然じゃん! あたしたちはその時はまだ兄妹だったんだし!  今の俺と瑠璃は肉体的には血がつながってなくて、それどころか互いに互いを好きだってはっきりして、歯止めが利かなくなっていて。  わたしもみっくんのこと大好きだし、初めてをあげるのもいいけれど、こんな屋外で変なことにはなりたくないよぉ。  俺は今にもとろけてしまいそうな理性を総動員すると、どうにか瑠璃から身を引きはがした。 「み、みっくん……」 「その……、『瑠璃』の部屋に行こ?」 「さっきはごめんね。あんなところでやり過ぎそうになって」  藤浦家への道すがら、瑠璃が謝ってきた。 「ううん、俺も流されちゃいそうだったし」  さっきまで『瑠璃』の記憶とごちゃ混ぜになっておかしくなりかけていた『自分』の感覚は、今のところどうにか安定していた。 「で、でも、おかしな感じだね、『自分』が隣にいるって。みっくんは二年間、こんな感じでいたんだね」 「う、うん。でも、俺の場合は光莉の記憶があったから、お兄ちゃんという意識も強かったし」  何の気なしに口にしてから、失敗したかもと思う。  俺が二年間『俺』を見ていた時と、今の俺たちとは違う。  瑠璃は『俺』だけど、瑠璃の記憶にとっては愛しいみっくんで、今の俺たち自体も両思いの間柄で。  それは瑠璃にとっても同じようなもので。  異性になったばかりで、元の自分という意識も当然強くて、血縁というブレーキもあった『光莉』と『俺』。そのケースと今は絶対に違う。  たぶん家の中に入ったら俺たち……  いや、今さらか。  さっきの俺は明らかに、ここではしたくないから家でと言ったようなものだし。瑠璃にしたって謝ったのは外でしそうになったことだし。  今から俺たち、結ばれるんだな。本来の性別とは逆だけど。  考えているうちに、あっさり藤浦家に到着した。


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