【ステータス完全版】最強姫騎士の抗えない欲求 前編
Added 2022-11-12 09:00:48 +0000 UTC今より遥か昔。まだ騎士による戦が主流だった頃。 強大な軍事力を背景に他国を支配下に置く帝国と、それに対抗すべく諸国が集結した連合軍との大戦が欧州で勃発していた。 それに伴い、欧州では帝国側か連合側かの2択を迫られる国が激増。否応なしにどちらかへの協力を迫られ、拒否すれば両方への敵対と見なされ滅ぼされるという事態が起きていた。 帝国にしてみれば恭順する意志を示さない国は逆賊であり、連合にとっても中立を標榜する国はいつ帝国側に寝返るかわからない。 どちらの味方にもならないということはすなわち、どちらも敵になりうるということを意味するのだ。 特に国力の小さな国であればなおさら、どちらかに着かなければあっさりと滅ぼされてしまう。小国を滅ぼすことなどどちらにとっても簡単なことなのだ。 そんな中にあって、国土が小さいながら類まれな武勇で中立を貫く国があった。 それは世にも珍しい、王族が戦場に立つしきたりを持つ国。 それだけではない。この国の王たる者はみな、見目麗しい女性が担うのだ。 それは他に類を見ない、女性戦士が王座に就く国。 姫騎士と呼ばれる者が治める国なのだ。 「……ふう。連合からのお茶会もようやく終わりましたね。茶会と言いつつ、ほとんどは軍への参加要請でしたが……」 その王宮にて行われた茶会。それは当代の姫騎士と連合諸侯との間に開かれたものであり、連合からの不可侵条約締結と連合への参加を求める話し合いの場であった。 姫騎士国家の盟主を務める第13代姫騎士、フローレンス・ド・コルニアックはこれを断固として辞退し、自国の中立をここに改めて宣することとなった。 「不可侵条約はともかく、連合への参加など言語道断です。王家に連綿と受け継がれしこの剣は、他の誰かの為に振るうものではないのですから」 それはこの国の国是、いかなる圧力にも屈さぬ不屈の闘志を貫くためである。 この国は姫騎士を頂点とした騎士の国であり、国民のほとんどが戦士として己の技量を磨き続けている。それは帝国や連合といったしがらみに囚われることなく自由に過ごすため、中立を保つ力を得るためである。 その頂点に立つ王家、姫騎士の戦闘力たるや武神の如し。外見こそ華奢な美少女であるものの、その剣の疾さと鋭さは幻影の如くに一瞬で敵の命を絶つ。 当代の姫騎士であるフローレンス、人呼んでフローラ姫もまたその剣技を受け継ぐ者。英雄と呼ばれる漢でさえも彼女の前には膝を屈するのだ。 そんな姫騎士を頂点に戴く武力国家とはどこの国も事を構えたくないのが本音であり、それゆえこの国は中立を保つことが出来ていた。 もちろん可能ならこの国の武力を接収したいという気持ちもあるが、それを推し進め過ぎて反感を買うことも避けたい。触れえざる爆発物のような国なのだ。 しかしそんな武神たる姫騎士も戦場以外では可愛らしい少女である。 兜を着けていないその顔は人形細工のように整っており、くりくりとした碧い瞳と渦を巻く金色の髪が目を引く麗しい姫君。 戦場での勇ましさが嘘のように感じられる、身長およそ160センチの少女はとてとてと王宮を進んでいた。 華やかなドレスの裾を軽く握り、少女はやや早足で廊下を歩く。その目に仄かな焦りを浮かばせて。 (……しかし、最初から軍門に降るつもりは無いと言っていましたのにああも食い下がられるとは……お陰でこんな時間まで……ぅう……!) 朝から始まった茶会、及び連合への参加要請は姫の意志と裏腹に夕方まで続いた。 途中に幾度か休憩を挟みはしたものの、諸侯の目的であるフローラ姫に関してはその間もずっとごまを擦られ続けており…… (必死なのはわかりますが少しはその、デリカシーというものを……) 休憩の間も諸侯に捕まっていたフローラ姫は、数時間に渡って続いた茶会の間一度も席を外すことができなかったのだ。 そして茶会で振る舞われるのは当然ながら紅茶。紅茶を大量に飲んだ人間がその後どうなるかは言うまでもない。 姫が急ぐ理由はそこにあった。 大きな廊下を早足で進み、ようやく辿り着く目的の地。 しかしそこは物々しい警備で囲まれていた。 『お疲れ様でございます。姫様!』 実戦用のフルプレートに身を包む若い騎士が姫に敬礼し、姫もまた驚きながらもそれに応える。 いくら諸侯との茶会があったとはいえど、応接間でもないこんな場所に数十人からの騎士がいるというのはあまりにもおかしい。 「え、ええ。ご苦労さまです……それよりもこれは何の騒ぎです?茶会も終わった今、このような場所を警護する必要は無いはずですが」 『は、左様でございますがこれは女王陛下からのご命令でありますれば』 「お母様の……?それはもしや」 『女王陛下からはもし姫様がここを訪れることがあればこのお手紙を読み上げるようにと伝言を授かっております。今読んでもよろしいですか?』 「……ええ、お願いします。……嫌な予感が……」 騎士の言葉に言いしれない悪寒を覚えるフローラ。 彼女の母である女王にして先代の姫騎士は、やはり彼女と同様に壮絶な武勇とカリスマを誇った女傑である。 しかし娘のフローラに対して、女王はとても難儀な人物でもあったのだ。その理由は…… 『……え?これを……読むのか……?』 「……読みにくいようであれば、渡してもらえれば自分で読みますよ」 『……い、いえ、女王陛下からはこれを姫に渡してはならないとも言われておりますので……大丈夫です。騎士の誇りにかけて、読みます。いざ……!』 『えー……【私の愛しく可愛く美しい愛娘へ♡諸侯とのお茶会お疲れ様♡いっぱいお紅茶飲んじゃったところ悪いけど、今からお手洗いは完全に封鎖しマス♡】』 『【実戦を想定した模擬訓練みたいなもので、騎士たちには武器以外の実戦装備を許可してるわ♡騎士たちにはこのトイレを要人の部屋だと思って守護するように言い聞かせてマス♡】』 『【騎士団にはいろいろと言い含めてあるから全員死に物狂いよ♡おトイレに行きたいなら騎士団みんな全滅させるつもりでネ♡】』 『【つ♡い♡し♡ん♡もしダメだった時はワタシの部屋にいらっしゃいね♡いーっぱい慰めてア・ゲ・ル♡♡♡】……………………い、以上……です……』 「……………………その…………ご苦労さまです…………」 そう、先代の姫騎士であり現在の女王は異常なほど娘を溺愛する極度のウロフィリアだったのだ。 フローラの用足しを覗きに来たことも一度や二度ではないし、そもそも幼かった時のおしめなども全て女王が率先して行っていた。そしてその度に荒い鼻息を吹きかけられて育ってきたのだ。 女王の性癖はフローラもよく、その身でもって知っている。そのため彼女の方の驚きは少なく、「またか」という程度の認識だったものの…… 『女王……陛下が……このような……これは夢なのか……?いや、夢でないはずがない……!』 「……どうか、強く生きてください……」 女王の手紙を「♡」ひとつに至るまでていねいに読み上げ、さらには小さく書かれた指示の通りセクシーな雰囲気を込めて読み切った誇り高き若い騎士には衝撃的な事実であったことは間違いない。 国のため、王家のために命を懸けてその身を鍛え上げる彼にとって、その王家の頂点がこれと認めたくないのも仕方がないだろう。 しかしこれからフローラには、この若い騎士など比ではないほどの辱めが与えられることになるのだ。もはや猶予はない。 「しかし、それはそれです。事情がそうしたことであるのなら……」 『……え?……ぐぇっ』 どさ…… 「……ごめんなさい。わたくしも、退くわけにはいかないのです」 頑強なフルプレートの継ぎ目、首の部分を狙って腕を絡め、そのまま絞め落とす。いわゆるチョークスリーパー。 姫騎士といえど腕力で男に適うわけは無いし、フルプレートに対して素手の打撃を食らわせたところで効き目はない。 しかし装甲の継ぎ目を狙う絞め技なら、装甲の下の生身に攻撃を与えられる。そのうえ不意を突いたのであれば回避は困難だ。フローラのとった行動は最善のものだった。 そして倒した兵士から訓練用の剣を拝借。役に立つかはわからないが、少なくともこれで最低限の戦う準備が整った。 (……まさか本当に騎士団全部が敵だなどとは思いたくありませんが……本当にそうだとしたら20000人がわたくしの敵となることに……) (いえ、しかし全員を倒さずとも突破が叶えばそれでいいはず……一度に配備できる数にも限りはありますし、打つ手は必ずあるはずです) 騎士団すべてに女王からの命が行き届いているなら、彼女の敵はこの国にいる2万の騎士全員となる。 だが目的はあくまで布陣の突破であり、騎士の全滅ではない。困難であることに変わりはないが、まったく不可能でもないはずだ。 高いハードルの向こうの勝利とトイレを目指して、フローラの戦いが始まった。 フローレンス・ド・コルニアック(フローラ) 右腕 訓練用ロングソード(鈍器) 左腕 なし 体 パーティドレス 足 高貴なヒール 下着 純白レースぱんつ ステータス 状態:ふつう 最後に済ませた時間:9時間前 尿意 620/870 体力 570/570 精神力 300/300 攻撃力 557 防御力 326 技量 781 素早さ 823 ひとことコメント お母様……まったくもう……! スキル グリムローズ・ブルジオン 王家に伝わる剣術の最も基本的な型。目にも留まらぬ疾さで切り裂く。確定先手、確定クリティカル グリムローズ・フロレゾン 王家に伝わる剣術の応用編。相手に合わせて変化する受け身の技であり、下手に攻撃をするとその瞬間首を掻き切られて絶命する。 敵の攻撃を受けた際攻撃力の300%で反撃する。確定クリティカル。 パッシブスキル グリムローズ・ジャルミネーション 王家に伝わるフットワーク。たおやかに舞い踊るように敵の攻撃をかいくぐる。回避率+20%、素早さ+20%。 姫騎士のカリスマ 姫君が戦場に立ち、みんなを鼓舞する。 パーティの攻撃力+10% 国民のアイドル 見目麗しい姫君という最強の愛され要素。 パーティの体力毎ターン10%回復 必殺技 グリムローズ・プレインフロレゾン くるくると踊るような動きで敵を幻惑し、流れるような無駄のない動きで敵の急所を切り裂く。 血飛沫が描く軌跡はまるで真紅の薔薇のよう。 敵全体に攻撃力の500%ダメージ 確定クリティカル 20%の確率で即死 国民の大半が騎士の国の姫にして最強の騎士。 この国が他国の侵略を跳ね除けるほど強いのはひとえに彼女ら姫騎士の存在のせい。 姫騎士はその強さもさることながら、その美しさと王族のカリスマでもって味方を鼓舞するのが最も恐ろしい。 彼女が最前線で敵軍を滅多切りになどすれば、奮い立たない騎士はいない。 その高い士気でもって敵軍を撃滅するのだ。 また姫騎士はその存在自体が味方の練度を高めるのに役立っている。 姫騎士は国内最強の技量持つ美少女の王族。当然ながら騎士にとって彼女らを娶るのは最高の栄誉である。 なのでこの国では国内最強の騎士が姫騎士の婿、すなわち王となるのがしきたりである。 姫騎士を娶るため、騎士たちは連日連夜厳しい修行を行うのだ。 そして騎士の序列1位になった者は、一年に一度全国民の前で行われる最終試合にて姫騎士と戦い、勝利したら晴れて姫騎士と結ばれるのである。 姫騎士と結ばれるには姫騎士に勝たなくてはならないため、騎士たちは凄まじい訓練を己に課し、一人一人が一騎当千のつわものとなるのである。それでも勝てる騎士は20年に一人程度だが。 姫騎士。それは当人の強さのみならず、味方の練度にも寄与する恐るべき存在なのだ。 フローラもまた13歳で実戦デビューしてから3回ほど最終試合に臨み、すべて5分以内で勝利している。 はたして彼女と結ばれるのはいかなつわものだろうか。 王家の使う剣技「グリムローズ」はその名の通り、敵の血飛沫を散らしながら戦う姿が薔薇のように見えたことから寓話の薔薇、すなわち触れること叶わない薔薇と呼ばれたのが由来。 フローラの使う技には花の開花段階に応じた名前が付けられているが、これは彼女のアイデア。 戦闘の際にはとうぜん叫ぶ。 __________________ 1時間後…… 「ふむ……おおよその敵戦力は把握しましたがやはり、一度に全戦力を投入しているというわけではないようですね」 トイレ封鎖から一時間。フローラはその間特に戦闘などをすることなく偵察に注力していた。 それは敵戦力を把握して的確な行動を採るため。一度のチャンスで確実に包囲を突破するためである。 トイレの封鎖が女王の命によるものだとしても、騎士団は国防の要である。 全戦力をこれに投じるとしても一度に全てというわけではなく、トイレ前に配備できるだけの数を配備したら後は交代で見張る形式のようだった。 倒したらその都度補充されるのは間違いないだろうが、補充が間に合わないほどの速さで突撃すれば突破も不可能ではないだろう。 (しかし……真剣ならまだしも、訓練用の剣では……) だがそれにはひとつの問題があった。今の彼女が装備している剣は実戦用の斬れる剣ではなく、訓練用の斬れない剣。しっかりと刃引きがなされたそれは単なる鈍器である。 姫騎士とはいえ華奢な少女の腕力で鎧を着こんだ男に、こんな装備で立ち向かうのは分が悪いにも程がある。 姫騎士の強さのゆえんはひとえに正確極まる剣の冴えであり、鎧のすき間を縫うようにして首を切り裂くのが基本戦術なのだ。鈍器のような剣ではその強さの3分の1程度すら発揮できないだろう。 鈍器は鈍器で使いようもあるだろうが、普段とまったく使い勝手が異なるため様々な制約があるのは間違いない。 それで数十人からの包囲を突破してトイレにたどり着くというのはなかなかに分の悪い賭けだと言える。 かといって自室にある愛用の剣を持ってくるかといえばそうもいかない。彼女がこれから相手するのは敵国の兵ではなく、自国の騎士なのだから。 いくら事情があるとはいえ、王族が騎士を虐殺するようなことがあっていいはずはない。真剣を用いた敵陣突破は論外である。 (体の小ささを利用して搔い潜る……にも限度がありますし、やはり10~20人程度は倒す必要が……) ぶるるっ…… 「んっ……!」 しかし紅茶を大量に飲んだ身体はもう、作戦が決まるまで待ってはくれなかった。 顎に手を当てて策を考える中、早くしたいと訴えるように膀胱が悲鳴をあげる。 多勢に無勢の状況下、フローラは分の悪い賭けに打って出るしかなかった。 もっと余裕があれば違う方法もとっていたかもしれないが、もうそれを模索している余裕もないのだ。 (こうなれば、戦いながら策を考えるしかありません……!) 策がないなら、通れる道がないならなんとかして道を作る。腹を括って彼女はトイレを塞ぐ騎士たちに突っ込んでいく。 こうしてフローラと騎士団との戦いは幕を開けるのだった。 フローレンス・ド・コルニアック 右腕 訓練用ロングソード(鈍器) 左腕 なし 体 パーティドレス 足 白いくつした 下着 純白レースぱんつ ステータス 状態:ふつう 最後に済ませた時間:10時間前 尿意 750/870 体力 570/570 精神力 300/300 攻撃力 557 防御力 326 技量 781 素早さ 823 ひとことコメント 負けるわけにはまいりません……! スキル グリムローズ・ブルジオン 王家に伝わる剣術の最も基本的な型。目にも留まらぬ疾さで切り裂く。確定先手、確定クリティカル グリムローズ・フロレゾン 王家に伝わる剣術の応用編。相手に合わせて変化する受け身の技であり、下手に攻撃をするとその瞬間首を掻き切られて絶命する。 敵の攻撃を受けた際攻撃力の300%で反撃する。確定クリティカル。 パッシブスキル グリムローズ・ジャルミネーション 王家に伝わるフットワーク。たおやかに舞い踊るように敵の攻撃をかいくぐる。回避率+20%、素早さ+20%。 姫騎士のカリスマ 姫君が戦場に立ち、みんなを鼓舞する。 パーティの攻撃力+10% 国民のアイドル 見目麗しい姫君という最強の愛され要素。 パーティの体力毎ターン10%回復 高まる衝動 バッドステータス 徐々に募る生理的衝動が彼女から落ち着きを奪う。 20%の確率で精神力が10%減少する。 必殺技 グリムローズ・プレインフロレゾン くるくると踊るような動きで敵を幻惑し、流れるような無駄のない動きで敵の急所を切り裂く。 血飛沫が描く軌跡はまるで真紅の薔薇のよう。 敵全体に攻撃力の500%ダメージ 確定クリティカル 20%の確率で即死 高まる生理的欲求に追い立てられ、策がないまま無謀な戦いを強いられることとなった姫騎士。 どこかに穴がないかと偵察していたものの、やはりそんなものはどこにもなかった。 王宮内にトイレはいくつもあるが、そのどれにも数十人からの騎士が張り付いている。戦闘は避けられない。 まだピンチと呼ぶほどではないものの、やや落ち着きがなくなりつつある。果たして彼女は無事にゴールへたどり着けるのだろうか。 __________________________ 『絶対に死守しろ!!!死んでもここを守れエエエエエ!!!!!』 「くっ……!」 フローラと騎士団が戦闘を開始してからしばらく、状況は膠着していた。 その理由は極めてシンプルで、双方に決定打がないためである。 フローラの腕力と獲物では重装の騎士に歯が立たず、騎士の攻撃はフローラのすばやい動きの前に当たらない。 そもそも騎士たちに下された命令はトイレの死守であり、姫の殺害ではない。そのため危害を加えることはならないのだ。 決定打を与えることができない姫と、姫を傷つけようものなら即打ち首の騎士団。双方ともに攻め切ることのできない泥仕合が続く。 (騎士たちの動きは鈍い……そうそう捕まることはなさそうですが、このまま長引くのは……) だがこうしてばかりもいられない。いくらでも代わりがいて、疲れたら休めばいい騎士たちとフローラとでは決定的な違いがある。 長く戦闘が続いて困るのはどちらかなど、考えるまでもないのだから。 きゅんと疼く下腹部をさすり、フローラはひとつの覚悟を決める。 それは自国の騎士を過度に傷つけないため、己に課していた制限の解除。 国内最強の戦士である彼女には、当然ながらあらゆる戦いの仕方が叩き込まれている。 その中には甲冑を着込んだ兵士を制するやり方も含まれているのだ。 「やああああああーーーーー!!!!」 そして今、姫騎士の本気が牙を剥く。 頑強なフルプレートとヘルムで武装した騎士に生半可な攻撃は通用しない。切れ味の良い剣であっても鎧の上から斬りつけては効果が薄いだろう。 そのため普段の彼女は、可動域を確保するため守りが脆弱な首の部分をピンポイントで狙っていた。だが今の装備でそれをしたところであまり意味はなく、普段と異なる戦い方が求められる。 そこで彼女のとった行動は、剣を剣として使わないということだった。 がつんっっっっ!!!!!! おたまと鍋をぶつけ合わせたような、あるいはそれより遥かに重く鈍い金属音が響き渡る。 頑強なヘルムをかぶる相手に対して、重い物体を叩きつけるというのは意外にもかなり有効なのだ。 たとえば巨大な鐘、人ひとりが入れる巨大な鐘があったとして、その中に人を収めたまま叩きつけたらどうなるだろうか。 叩きつけられた衝撃はその中を反響し、中にいる人間の脳をぐちゃぐちゃに揺らすことだろう。最悪の場合そのまま死んでしまうこともあり得る。 それと同じことが切れ味のない剣を叩きつけられたヘルムの中で起こっていた。 『あが……』 「……ごめんなさい。それでも……これもまた、戦いなのです」 「もう迷いません。ここからは……ひとつの戦争と思ってお相手いたします」 これまでは相手が自国の騎士であるため過度に傷つけるのを避けようと思っていたし、戦力で不利なのは間違いないのでなるべく戦わない方法での突破を図っていた。 しかし騎士の士気は異様に高く、女王が何を言い含めたのかは知らないが易しい方法での解決は望めそうもない。 ならば一人の騎士としてその覚悟に全力で応える。愛用の剣が無くとも、持てるすべての力量を以て道を切り開く。 「せえええええええーーーーー!!!!!」 がいいいいいいぃん……!!! 仮にも金属製でありそこそこの重さがある訓練用の剣を重装の騎士の頭に叩きつけ、近くにいた数人の騎士の意識を奪う。 身体ごと回転させながら叩きつけ、少女の腕力でも有効打を与えられるように。 時には彼女を捕まえようと飛び掛かる騎士たちが自滅するようにも仕向け、包囲する騎士たちの数を徐々に徐々に減らしていく。 本気を出した姫騎士の戦力は数十程度の騎士で止められるようなものではとてもなく、本来の武器ではない上多勢に無勢でもどんどんと包囲を押し込んでいく。 (いける、このままならっ……!) 当初の想定通り20人近くをなぎ倒し、包囲に穴が見え始めた。今ならば掻い潜ることもできるかもしれない。 見えてきた光明に胸が高鳴り、一瞬だけその先のことに思いを馳せた、その一瞬だった。 ぷしゅ…… 「ひ……っっ!!!?」 身をかがめて包囲の薄いところに突撃し、その向こうに行こうと脚を開いた時、熱い何かが溢れるのを感じた。 その瞬間彼女のすばやい身のこなしは完全に消え失せ、ぎゅうと太股をきつく締め合わせる。 紛れようもなくそれは彼女がほんの少しだけではあるが「失敗」したことを示していた。 (う、うそ、嘘です……!これは、きっと、汗が滲んだだけ……!) どんなに心の中でごまかしたところで事実は消えることなく、下着に残った不愉快な感触が残り続ける。 そして彼女が動揺している間騎士たちも何もしないはずはなく、この隙に姫を捕まえようと一斉に飛び掛かってきた。 四方八方から飛び掛かる重装の騎士たち。絶体絶命のピンチが訪れた……かと思われた。 しかし周囲の騎士たちが飛び掛かってきたことで、元々数を減らしていた包囲はほとんどスカスカの状態だ。援軍を呼んではいるもののまだ遠く、飛び掛かってきているのさえやり過ごせたなら千載一遇の好機が来るかもしれない。 (おねがい、一瞬だけがんばって……!) フローラはこの好機に際し、尿意に震える脚へ活を入れる。 飛び掛かってくる騎士の先頭、大柄な騎士の肩に手をかけて飛び上がり、華麗な大ジャンプで飛び掛かる無数の騎士たちを回避してのけたのだ。 脚をきれいに天へ向け、美しい弧を描く大ジャンプ。着地した先には数人程度の騎士しかおらず、飛び掛かってきた勢いのまま折り重なって倒れた騎士たちは重装が仇となって起き上がってくる気配はない。 残る数人をかわすことなど彼女にとってはわけもなく、トイレまでの道は封鎖から二時間かけてようやく開かれたのだ。 (今がチャンス……!) わき目もふらずトイレの扉に突撃し、そのノブに手をかけて思い切りひねる。 これでやっとトイレに入れ、長く出すことのできなかった尿意を思う存分解放できる…… ……そのはずだった。 がちゃんっ、がちゃんっ…… 「えっ!?」 だが扉は開かなかった。姫の願いを裏切るように、無情にも。 その理由は極めて単純で、それでいて絶望的なものだった。 トイレ前で立ち往生するフローラに近寄ってきた一人の騎士。他より装飾が多い鎧を身に纏う中隊長クラスの騎士はあるものを取り出し、彼女に見せつけてきた。 それは小さな小さなひとつのカギだった。 『申し訳ありませぬ、姫様。女王陛下のご指示により、この扉は封鎖いたしております……開けたいのであれば、どうぞ私を倒してから』 「そ、それなら……!」 扉が開かない理由は極めて単純であり、ただカギがかけられているというだけだった。 考えてみれば当然のことではあるのだが、騎士による守りが厳重だったためそこまで思い至らなかったのだ。 しかし理由がわかってしまえば解決は容易い。親切にもこの騎士が仕掛けを教えてくれたため、すぐにでも解決できると思われた。 だがその望みはすぐ打ち砕かれることとなる。 『そして大変恐縮ではありますが……増援がやってきました。いかに姫様と言えどこの包囲を抜けて私を仕留めるのは困難かと存じます。どうぞお引き取りを』 「そん……な……!」 先ほどはまだ遠くにいた増援が、こうしている間にやってきてしまった。カギを持つ中隊長との間に何十もの壁が立ちはだかる。 さっきと同じほどの密度で、さっきよりも困難な道を、さっきよりも悪化したコンディションで。 「な、なぜです……!なぜこうまでして……!!」 『…………お引き取りください、姫様』 人の目があるため控えめながら、それでも確かに高まるそれが彼女から落ち着きを奪う。 ぎゅっとドレスの裾を握りしめ、フローラはトイレから引き剥がされるのだった。 フローレンス・ド・コルニアック 右腕 訓練用ロングソード(鈍器) 左腕 なし 体 パーティドレス 足 白いくつした 下着 純白レースぱんつ(染み極小) ステータス 状態:尿意 最後に済ませた時間:11時間前 尿意 940/870 体力 570/570 精神力 240/300 攻撃力 557 防御力 326 技量 781 素早さ 621 ひとことコメント な、なにか打つ手があるはずです……! スキル グリムローズ・ブルジオン(劣化) 王家に伝わる剣術の最も基本的な型。そこそこの疾さで切り裂く。確定先手 グリムローズ・フロレゾン(劣化) 王家に伝わる剣術の応用編。相手に合わせて変化する受け身の技だが、使い手の集中が乱れてきていて時々失敗する。 敵の攻撃を受けた際70%の確率で攻撃力の300%で反撃する。 パッシブスキル グリムローズ・ジャルミネーション(劣化) 王家に伝わるフットワーク。たおやかに舞い踊るように敵の攻撃をかいくぐる……が、彼女のコンディション悪化に伴いその動きには乱れが見られる。 回避率+5%、素早さ+5% 姫騎士のカリスマ 姫君が戦場に立ち、みんなを鼓舞する。 パーティの攻撃力+10% 国民のアイドル 見目麗しい姫君という最強の愛され要素。 パーティの体力毎ターン10%回復 高まる衝動+ バッドステータス 徐々に募る生理的衝動が彼女から落ち着きを奪う。 30%の確率で精神力が10%減少する。 漏れ出る先走り バッドステータス 満杯の膀胱から括約筋の守りを抜けてにじみ出てしまう先走り。 20%の確率で行動キャンセル 必殺技 グリムローズ・プレインフロレゾン(劣化) くるくると踊るような動きで敵を幻惑し、流れるような無駄のない動きで敵の急所を切り裂く。 しかし動きが激しいため今の状態で真の力は発揮できそうもない。 血飛沫が描く奇跡は本来なら深紅の薔薇のように見えるが、今は見る影もない。 敵全体に攻撃力の300%ダメージ 飲んできた紅茶が降りてきつつあり、徐々に弱体化してきている最強姫騎士。 まだ戦えこそするが普段より動きが悪くなっているのは明らかで、その原因は明白。 お姫様らしい恥じらいでなんとか動作を抑え込んでいるが、人目がなければとっくに前を押さえていてもおかしくない程度の尿意を抱えている。 ふとした拍子に漏れ出ては彼女の戦う動きを阻害する。無数の騎士と同時に自分自身とも戦わなければならない彼女の未来はいかに。 _________________________________ 30分後…… 『姫様ーーー!?姫様ーーーー!!!こちらにいらっしゃるのは存じておりますーー!!!どうか出てきてくださいーー!!!』 「うぅっ……!」 (や、やはりここにも……!) フローラがトイレから引き剥がされたのち、彼女は大きな決断を迫られた。 それはトイレを諦めるという決断。 彼女とトイレとの間にはふたたび何十人もの壁ができていて、もう一度それを突破するのは困難だったからだ。 交渉による解決も試みてはみたが、やはり彼女より立場が上の女王が背後にいてはそれも難しい。 そのため彼女は今、王宮内をひたすら徘徊していた。 騎士たちの目から隠れ、いい場所を見つけるために。 (王宮中にいるだろうとは思っていましたが、それにしても多すぎます……!お母様は、どれだけ私の……!) (は、はやく、したいのにぃ……!) 潜み込んだ物陰でもじ、と腰を揺するフローラ。 彼女が敵に背を向け、こそこそと隠れているのは他でもない。彼女がトイレを諦めたからだ。 トイレで無事に済ませることができないなら、どこかでこっそりと。まだ動けるうちにいいところを見つけ出そうという的確な判断だった。 もちろんそれも姫として育ってきた彼女にしてみれば、顔から火が出そうなほど恥ずかしいことではある。 だがそれでも、漏らすよりは。その一心で彼女は新天地を探し求めていた。 王宮のそこら中にいる騎士たち。彼女のトイレを妨害するため集められた2万人の目をかいくぐって。 姫騎士の新たな戦いがここに幕を開けた。 探索開始から45分…… 【中庭】 ちょうどいい場所を探し求めてフローラがたどり着いた候補。それは中庭だった。 中庭は観賞用の植物や垣根が植わっており、隠れる場所がかなり多い。 また地面が土なので後始末の必要もなく、「それ」をするには最適の環境だった。 しかしそれゆえ、相手にとってもまたわかりやすい防衛拠点である。 (やはり、中庭のような場所には多くの騎士が……ざっと40はいるでしょうか……) 最重要拠点であるトイレに次ぐほどの圧倒的な人の数。それによる監視網をかいくぐるのはいくら彼女と言えども困難を極める。 練度が低い部隊ならいざ知らず、この国の騎士は他ならぬ彼女自身のせいで並外れた練度を誇る。そう簡単に見逃してくれる相手ではない。 生垣の隅から隅まで見渡せる配置。死角なくびっしりと配備されたそれは理想的な監視網だった。 (とてもではないですが、ここでするのは……見つかる前に撤退しましょう) 最適な場所であるゆえの厳重な警備を前に、彼女も諦めざるを得なかった。 探索開始60分後…… 【王宮東棟 武器庫】 『姫様を見たか?』 『ここに来るのは見たんだが……さすがにすぐ見つけさせては下さらないか』 『探すぞ』 (……っ、こ、ここにも……!) 次に姫が訪れたのは王宮東棟にある武器庫。 王宮警護にあたる騎士たちの装備が収められている倉庫なら隠れる場所も多いだろうと踏んでいたのだが…… しかしここも例に漏れず厳重な警備体制が敷かれ、広いとは言えない空間に20人近い騎士が配備されていた。 広い王宮を隠れ潜みながら移動し、適した場所を探すフローラ姫。時には障害物に隠れ、時には天井に張り付き、時には侍女に変装し…… 姫騎士としてあらゆるスキルを叩き込まれた彼女の潜入術により、潜入自体は滞りなくできていた。 しかしそこでできるかと言えばまた違った問題がある。「する」のに適した壺などの容れ物は厳重に警備されていて、男の騎士以外は近づくことができないからだ。 そして部屋の中を騎士が入れ替わり立ち代わりぐるぐると警戒しているので、安定した死角というのも存在しない。常に死角から死角に動き回ることが要求されるので、長い時間一か所に留まることができないのだ。 そんな状況でそれをすることなどできるわけもなく、潜入という緊張感も相まって彼女の尿意は急速に高まっていく。 『……警戒中にすまんが、交代を呼んでくれないか。少しトイレに行きたくなってな』 『ああ、そりゃ仕方ないな。わかったよ、姫様は俺たちで捜しておくからゆっくり行ってこい』 「……っ!」 (ず、ずるい……!わたくしはもう半日も行けてないのに……!) 物陰に潜む彼女の前で繰り広げられるトイレのやり取り。それは彼女にとって物凄くうらやましいやり取りだった。 交代が来るのと同時にトイレへ向かっていく騎士を、彼女は羨望の眼差しで見つめていた。 探索開始90分後…… 【西棟 厨房】 『今日も任務ご苦労様です。ささやかながらスープなどいかがですか?温まりますよ』 『おお、これは有難い……のですが申し訳ない。我々は今、女王陛下から賜った任務の最中でありますので』 『あらまあ、そんなに大変なお仕事なのですか?』 『はい。なにしろ今回のお相手は世界最強の御仁でありますので』 『あらあら……まるで女王陛下御自身を敵とされているかのようですねぇ』 『当たらずとも遠からず……ですな』 騎士たちから逃げ続け、たどり着いた西棟の厨房。ここにも多くの騎士たちが詰めていた。 東棟は王宮警護の騎士たちが多く詰める宿舎的役割だが、西棟はそれと対照的に客賓を迎えたりする場所。遮蔽物もあまり多くはないうえ、調度品の数々はとてもじゃないが排泄には適さない。 必然、ここで出来そうな場所となると限られてくる。トイレそのものか、厨房か。 夕食の用意に励む侍女たちと騎士たちの和やかな軽口を、フローラは険しい形相で盗み聞いていた。 (や、休んでくれたら……できたのに……っ!) 募る尿意が、姫君から余裕を奪う。心中で漏れる恨み言。 姫としては許せるはずもない任務中のサボタージュ。それを求めてしまうほどに。 騎士たちが規律に背いて任務中に気を抜いてくれたなら、もしかしたらできたかもしれないのに、と。 調理場に数多くある鍋に、熱く滾る熱湯を出してしまえたら。 それを想像した瞬間、何度目かの先走りが漏れてしまう。 (……っ、だめ……!違うこと、考えないと……!) 懸命に水から意識を逸らしつつ、彼女はこの場を離れていった。 フローレンス・ド・コルニアック 右腕 訓練用ロングソード(鈍器) 左腕 なし 体 パーティドレス 足 白いくつした 下着 純白レースぱんつ(染み中) ステータス 状態:尿意 最後に済ませた時間:12時間半前 尿意 1250/870 体力 570/570 精神力 150/300 攻撃力 557 防御力 326 技量 462 素早さ 327 ひとことコメント どうして……させてくれないのですか……!? スキル グリムローズ・ブルジオン(劣化大) 王家に伝わる剣術の最も基本的な型。のろのろと剣を振る。攻撃力の50%ダメージ。 グリムローズ・フロレゾン(劣化大) 王家に伝わる剣術の応用編。相手に合わせて変化する受け身の技だが、使い手の集中がかなり乱れておりだいたい失敗する。 敵の攻撃を受けた際30%の確率で反撃する。 パッシブスキル 震える両脚 バッドステータス たおやかに舞い踊るように敵の攻撃をかいくぐるフットワークが見る影もなく、その両脚は何かを堪えるように震えている。 回避率-10%、素早さ-10% 姫騎士のカリスマ 姫君が戦場に立ち、みんなを鼓舞する。 パーティの攻撃力+10% 国民のアイドル 見目麗しい姫君という最強の愛され要素。 パーティの体力毎ターン10%回復 高まる衝動++ バッドステータス 徐々に募る生理的衝動が彼女から落ち着きを奪う。 50%の確率で精神力が10%減少する。 漏れ出る先走り+ バッドステータス 満杯の膀胱から括約筋の守りを抜けてにじみ出てしまう先走り。 40%の確率で行動キャンセル おトイレに行きたい バッドステータス 溜まった尿意が少女から冷静な思考を奪う。 スキル発動コスト2倍 必殺技 発動不能 あれからさらに尿意が募り、弱体化著しい最強姫騎士。 その辺りで済ませる覚悟を決めたのもつかの間、女王はそれさえも許してくれなかった。 どこに行っても騎士がいて彼女の放尿を妨害。溜まりに溜まった小便は少女の下腹部を圧迫してその動きに致命的な影響を及ぼしている。 早くしたい一心で頑張る少女の明日はいかに。 ______________ 探索開始100分後…… 【中央宮 廊下】 (ど、どうして気づかなかったのでしょう……あそこならきっと……!) 放尿できる場所を探し求めた彼女は、今中央宮殿の廊下をのろのろと進んでいた。 もうまともに走ることも叶わなくなった彼女が果たしてどこに行こうというのか。 その目的地は、彼女自身さえ先ほどまで思い浮かばなかった意外な場所。 トイレでもなく、外でもない。それはこの宮殿でも1,2を争う高貴な部屋。 他でもない、姫君たる彼女の自室だった。 【中央宮 自室】 (ま、守りは……いないっ!!?や、やった!やっとぉっ……!) 意外にも誰一人警護する者がいない廊下で、くねくねと腰を揺すり前を押さえながら少女が駆ける。 最後の力を両足に込めて、その顔に希望の光を灯して。 そしてたどり着いた自分の部屋。若干の後ろめたさはあれど、自分の部屋のものならなんとでもなる。 そして目に飛び込んでくるのは、じっくり育てていた観葉植物の鉢。大きな鉢に向けて彼女は部屋に入るなりすぐ突進していった。 もう猶予はない。ドレスの裾をまくり、染みが付いた純白の下着を横にずらして、溜まりに溜まったほとばしりを、いま。 「ああぁっ……!やっと、やっと……!ぉしっ……ぁはあぁ……!」 ぷしゅうぅっ!!!! 下着をずらすと同時、勢いよく噴き出していく姫の限界放尿。 やっとできた安心感に包まれる彼女だが、その至福はすぐさま断ち切られることとなる。 『んふ、んふふふ……!やーっぱりここに来たわねえ♡』 「ふぁ……?」 「………………っっっっっっ!!!?!??!っっっっきゃあああぁあああああああああ!!!!!!おっっっおお、おかっ、おかあさま!!?」 しゅううぅーーーーー……じゅじゅっ、ぶじゅじゅ…… 『あら、頑張って途中で止められたのねえ。えらいえらい♡さすが私の娘だわあ』 『でもまだまだ未熟ねえ。焦っていたのはわかるけど、廊下の警備がいなかったことに何の疑いも持たないなんて……』 「そっ、そそ、それよりっ!なんでここにいらっしゃるのですか!!?」 『あら、わからない?あなたがこれまでされてきたことと、私がここにいることを照らし合わせればすぐでしょうに』 「そ、そんなこと、申されても……!」 突然現れた彼女の母、現在の女王であり先代の姫騎士。 彼女に肩を叩かれ、焦りと恥ずかしさのあまりきゅ、と尿口が窄まり放尿が中断される。 限界を迎えたところで無理に中断され、出口にじんじんとした痛みと熱が走る。 もう一度したいとがなる身体を、フローラは母の手前必死に抑え込んでいた。苦悶の表情を浮かべ、もじもじと身体を揺すりながら。 『……ああ……!でもいいわ、貴女のその顔、とっても可愛い……だから答え合わせよ』 『つ・ま・り……私はおトイレ限界の貴女がここに来るよう仕向けて……そんな貴女をここでお迎えしようとしてたの。他でもない、私自身が最後の障害となるためにね♡』 「そ、それなら……お母さまを倒せば……!」 『うふ、そういうコト♡でもね、愛しい愛娘ちゃん』 『簡単に勝てるなんて……思っちゃダメよ』 軽妙な語り口ながら、訓練用の剣を携える女王。 それはフローラが育つまで国を守ってきた護国の剣であり、紛れもない本物の世界最強だった者。 その放つプレッシャーを、彼女は最悪のコンディションで受け止めていた。 大量の紅茶を飲んだ挙句半日も排泄を禁止され、ようやくできたと思ったのもつかの間に中断された彼女の尿意はもう限界をとうに越している。 (そう長くはもたない……勝負は一撃……!) (お願い、もう少しだけ頑張って……!) 当然ながら長期戦などできるはずもなく、採りうる戦法はただひとつ。 相手の出鼻を挫き一瞬で勝負を決する、速攻である。 一瞬だけでも普段の速さを取り戻すために呼吸を整え、今にも出てしまいそうな尿意を必死に抑え込む。 じくじくと痛む出口に無理矢理力を入れて、なんとか尿意を脇に追いやることができた。この数瞬の凪にすべてを賭けて、今。 (…………ここっっ!!) 電光石火。一瞬で間合いを詰め、女王の首元目掛けて剣を振り切る。 がきぃん、と甲高い金属音が部屋中に鳴り響き、勝敗は決した。 『はい、残念♡いい攻めだったけど、少し急ぎすぎね』 「う……そ……!?」 無情にも彼女の剣は女王の剣に受け止められ、乾坤一擲の大勝負は彼女の敗北に終わった。 『んふ、驚くことはないでしょう?貴女に剣を教えたのは私……こういう状況下で何を狙うかなんて、ちょっと考えればわかることだもの』 『普通の人間が反応するのは難しいでしょうけど、あらかじめ予測出来てれば対処は容易いわ。次はもうちょっと頑張りましょうね♡』 「い、いや……おかあさま、ゆるして……!」 いくら彼女の剣が素早くとも、相手もまた同じ剣を極めた者。 同格レベルの者同士であれば、相手が何を狙うかはある程度予測がつくものなのだ。 その先読みによって彼女の剣は受け止められ、そして脇に追いやっていた尿意もぶり返してきた。もう逆転はない。 『さあ、それじゃあ……おしおきの時間よ♡』 フローレンス・ド・コルニアック 右腕 訓練用ロングソード(鈍器) 左腕 なし 体 パーティドレス 足 白いくつした 下着 純白レースぱんつ(染み大) ステータス 状態:もれそう 最後に済ませた時間:13時間前 尿意 1320/870 体力 570/570 精神力 60/300 攻撃力 182 防御力 326 技量 130 素早さ 82 ひとことコメント ゆるして、お母さま……! スキル ぐりむろーず・ぶるじおん 王家に伝わる剣術の最も基本的な型……が見る影もないへなへなとした剣戟。確定後攻、攻撃力の30%ダメージ ぐりむろーず・ふろれぞん 王家に伝わる剣術の応用編。相手に合わせて変化する受け身の技……だったはずだが敵の攻撃を待つ余裕も反撃する余裕もないので何の意味もない。 効果なし パッシブスキル もじもじステップ バッドステータス 耐えがたい尿意が無意識にもじもじと我慢のステップを踏ませる。 回避率-25%、素早さ-25% 姫騎士のかりすま バッドステータス 姫君が戦場に立ち、みんなを鼓舞する……はずが、こんな彼女が表に出ても募るのは恥辱だけである。 パーティの攻撃力-10% 国民のあいどる(?) バッドステータス 見目麗しい姫君の恥ずかしい姿。見た者は何を思うだろうか。 精神力毎ターン10低下 高まる衝動 極 バッドステータス 一瞬たりと落ち着いていられない生理的衝動。とにかくトイレに行きたくて仕方がない。 75%の確率で精神力が10%減少する。 漏れ出る先走り++ バッドステータス ぱんぱんの膀胱から括約筋の守りを抜けてにじみ出てしまう先走り。 60%の確率で行動キャンセル おトイレに行きたい! バッドステータス 溜まった尿意が少女から冷静な思考を奪う。 スキル発動コスト3倍 必殺技 発動不能 おもらし寸前。もはやまともに動けないほど弱体化した最強姫騎士。 女王のいいように踊らされた挙句、最後の決戦にて惨敗した彼女の行く末はいかに。 なお、もしも尿意がなかったなら彼女は女王よりも僅差だが強い。 それはこの国の制度上、女王が女王となる時はすなわち最終試合で序列一位の騎士と戦って敗北する時であるため。 新たに生まれた姫騎士はかつて姫騎士であった女王からその敗北の経験を、また元姫騎士に勝った騎士すなわち王からも剣の奥義を伝授されるためだ。 姫騎士はこのしきたりにより代を重ねるごとに強くなっており、彼女もまた女王と王からその剣技のすべてを伝授されている。彼女の最強とは本当に文字通りのものなのだ。 それだけの実力が本来ならあるはずであり、尿意が無く一撃勝負にすべてを賭けたのでなければなんとか勝てていたはずなのだ。 それができなかったのはひとえに尿意がひどく、弱体化が著しいため。最強の戦士と言えど生理的欲求には勝てないのだ。 _______________