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ハルカナ
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ショーダウンⅡ 『16:妥協の条件』

#16:妥協の条件 「フフフ……あっちはあっちでクライマックスって感じになっちゃってるわね? 牡丹さんも人が悪いわぁ♥ 私にも綾香ちゃんをイジメる機会を残しておいて欲しかったのにあんなになるまで責めちゃってぇ♥ あれじゃあ勝負が終わる頃には虫の息じゃない♪ ねぇ? 麗華ちゃん♥」 「くっ!! あの牡丹と言う方は手加減というものを知りませんの? アレは明らかにやり過ぎですわ! 少し休ませてあげないと……綾香さん、本気で意識を手放してしまいかねませんわよ?」  牡丹と入れ替わりに綾香の背後に立ったバニーが、彼女の腋に手を差し込んでくすぐり始めた事により再び激しい笑いを吐き出し始めてしまった綾香……  その苦しそうな笑い声を背中に聞きながらも、麗華は恨めしそうな表情を向けて4戦目の準備のためにトランプをカットしている。 「えぇ~~? たかがくすぐりに手加減なんてする必要あるぅ? 気絶する様なら水でもぶっかけて目を醒まさせたらいじゃない♪ 防犯用の唐辛子スプレーとかもあるからそれを浴びせて起こしてあげても良いわよ?」 「意識の有る無しの問題じゃありません! あまりにも長い時間笑わせ続けると脳に酸素が行かなくなって後遺症が残ってしまうかもしれないのですよ!」 「わぁ~~怖い♥ 良かったぁ~私じゃな・く・て♪」 「……っく!!」  麗華は念入りに混ぜたカードの束をシューターの中へ入れ蓋を閉じた。シューターの取り出し口からはいつものように山の一番上のカードが裏向きにセットされ、麗華はそのカードを素早く引き抜いてカードの裏面を軽く指で摩ってみる。 『……触り心地に違和感は……なかった。それじゃあ……裏の模様で何か分かる様になっているのでしょうか?』  麗華はカードの裏の模様を凝視するように見て覚え、それを紅葉の方へと投げて配る。それからすかさず二枚目を引き抜いてその裏面を再び凝視する。 『うぅ……分かりませんわ。さっきの模様と……何一つ変わっていないように見えてしまう……』  模様にはトランプのマークでもあるハート、クラブ、スペード、ダイヤが小さくまばらに描かれていて、数は目視では確認できない程に多く配置されてあるし順番も方向もランダムに並んで模様を形成している為覚える事も困難である。  さっき配ったカードと今手に持っているカードの何処の模様が違っているのか……それを初めて見た麗華には気付きようがない。 「フフ……今度は模様を怪しんでいるの? 無駄な警戒ご苦労さんってやつね♥」  見ても分からないという結論に至った以上、裏面を何度凝視しても分かる訳が無い。麗華は諦めの息を吐きつつ2枚目のカードを自分の手元に置いた。 『また、わたくしの顔を見てらっしゃいますわね……。配られたカードを見ようともしないなんて……やはり何か背後にヒントが――』  紅葉の視線を感じ「今度こそは!」と思いを込めつつ不意をつく様に背後を振り返ってみるが……やはり今までと同じ様に怪しいものはなく、麗華の視界には無人の長い通路が続いている光景しか映らなかった。  もしも紅葉が自分の背後を観察しているという事だったら、この不意打ちの確認で何かしらの証拠が掴めるはずだが……何度やってもその気配がない。という事は、彼女の視線は自分の顔を凝視しているだけである事になる…… 『この“わたくしを見ている”という仕草も……彼女のブラフである可能性もありますわよね。ワザと怪しい仕草をして見せて、わたくしの注意を逸らしている……とか?』  麗華は次のカードを引き抜き、紅葉の顔を睨みながらそれを彼女の手元へと滑らせた。  続く3枚目、4枚目も紅葉の手元へ配り、次のカードからは連続で自分の手元にカードを配って最後の2枚を紅葉の方へと投げて最初の手札を配り終えた。 『せめてもう一つ……負ける前に確かめたい事がありますが……でも、それを行うには……わたくしに“ある程度”の役が入っていないと……確かめられませんわ……』  麗華は祈る様に自分の手札をカードホルダーに立てて手役を確認する……  しかし、彼女の願いも空しく……手札に役は入っていなかった。 『ダイヤの2、スペードの5、スペードのK、ハートの7、クラブの9……駄目ですわ。これでは……勝負に出ても意味がない……』  麗華は自分の手札に役が無い事に絶望した。それと同時に、あの時意地を張らずにあと500万を結城社長から借りておくべきだったと後悔した。 『このような事になるのでしたら……やはり借りておくべきでしたわね。結城社長が間に合ってくれた事への安堵で……気が抜けてしまっていましたわ……』  麗華の残りの残金は500万……。このままカードを交換してしまえば賭けるか降りるかを選択する事になるが……降りる為には100万を預けないといけないというルールである為降りるに降りられない。  100万を預けて降りてしまうと、残金は400万に減り……次の最低賭け額である500万を支払えない。だから、次の交換が行われれば降りるという選択肢が選べず、どんな役であれ勝負を強いられる事となる。  麗華は……最後にとある確認をしておきたかった。  どうしても……この確認だけは取っておきたかった。  しかし、この“確認”は……役が無ければ意味がない。  この“確認”を行う為には……最低でもツーペア以上の役が最初に必要なのだ…… 「……っ! 紅葉さん、少し……待っていただいてもよろしいですか?」  紅葉は自分の手札から交換のためのカードを引き抜こうとしている所だったが、麗華はそれに慌てるように手をかざして待ったをかけた。 「……なに? 後は交換して勝負するだけでしょ? ほら、麗華ちゃんも捨てる札……選んで頂戴よ?」  紅葉はカードから手を離し麗華の顔を覗き込む。麗華は悔しそうに歯を食いしばりながら……紅葉と最後の交渉を行う為に口を開いた。 「お願いが……ありますの……」 「……なに? この期に及んで……」 「まだ二枚目を交換していないこのタイミングであれば……その……降りる事を認めて下さらないかしら?」 「……はぁ? 何よその都合のいいお願いは……」 「つ、都合が良いのは……重々承知しておりますの! で、でも……その……どうもこの役……嫌な予感がしておりまして……」 「嫌な予感って……あんたが全部配った手札でしょ? だったら疑う要素何もないじゃない!」 「い、いえ! 疑っているとか……そう言う事ではなくてですね?」 「じゃあ……どういう事よ?」 「そ、その……えっと……何と言いますか……この手札じゃ不安と言いますか……」 「馬鹿じゃないの? だったら100万払って素直に降りたらいいじゃない!」 「そうしたいのは山々なのですが……ほら、紅葉さんも分かっていらっしゃるでしょ? わたくしには……後、500万しかない事……」 「さっきあの男がお金置いていったんじゃないの? そのアタッシュケース……追加の軍資金でしょ?」 「い、いえ! これはわたくしのではなくて……」 「そこから使えばいいじゃない……どうせ、たんまりそこに――」  っと、紅葉はそこまで言ってハッとなり言葉を止める。 『いや、待てよ? こいつそう言えば……綾香が抜け出せるって信じてあの金を使わないようにしてるんじゃないかしら? だとすると……綾香が脱出できないと悟ればあいつも気が変わって、あの金に手を付けてしまうかもしれない……。そうなればこいつとの勝負が長引く事になりかねないし、長引けばヒントを与えてしまう事にもなりかねない……。そうなるのは私も不本意ではある……か……』  そこまで考えを巡らせると、紅葉はワザとらしくハァと息を吐き……片目を瞑って麗華の顔を見る。 「まぁ、そうね……。普通はこんな対戦相手有利な特例を認める訳にはいかないんだけど……ここまで一勝すらしてない貴女に情けを掛けないってのは……私の主義に反するわ。だから今回は特別に認めてあげても良い……」 「ほ、本当ですかっ!?」 「ただし、タダでそれを認めるのは譲歩し過ぎだと思うから……三つ条件を付けさせて貰うわ!」 「……は、はい?」 「一つ、貴女はそのアタッシュケースのお金には手を付けない……次の勝負で負けたら大人しく自分の敗北を認めて私達の罰を受ける事!」 「……え、えぇ……勿論ですわ!」 「二つ、ここからは降りる宣言をする際は手札の交換をする前に宣言する事……それ以外のタイミングは認めないわ!」 「……了解……です」 「三つ、降りる際はお金は払わなくていい……だけど、降りる代金として貴女の“衣類”を担保にさせて貰う事にする……」 「……っ!? い、い、衣類!?」 「そっ♥ 最初の1回目はその真っ赤なドレスを脱いで下着姿になりなさい? もし次も降りるという事になればその下着も脱いがせて全裸になって貰う事になる……。降りられるのはその2回だけよ……それ以上は認めない……」 「2回……だけ……」 「その条件であれば認めてあげるわ。さぁ、どうする? 受け入れてくれるかしら?」  降りる選択をする度に服を脱がなくてはならない……  しかも回数も2回と制限されてしまう……  そんな条件を突き付けられ、麗華は戸惑ってしまう。  人の前で服を脱ぐなど……そんなはしたない行為を自分が……? 「私としてはこれが最大限の譲歩よ。だって……本来なら降りるのに100万を担保にするってルールなんだから……」  服を脱いでそれを担保に降りる権利を得るという事は、勝負に負ければその服は相手に取られるという事になる。負ければ……下手をすれば裸で帰らされる事になる…… 「さぁ、さぁ! どうすんの? ヤるの? ヤらないの?」  でも、麗華にとってはお金を消費せずに降りる権利が得られるのは破格の提案だと感じずにはいられない。  何せ……自分が恥ずかしい思いをするだけで、本来なかった筈のチャンスを2回も付与してくれるというのだから……  その提案は紅葉の油断の表われだとも言える。普通なら懇願しても一蹴されて当然なルール変更なのに、紅葉はそれを楽しむように承諾した。それはつまり……紅葉が絶対に負けないという確固たる自信があるから可能なことで、それに絶対的な信頼を置いているからに他ならない。  勝つか負けるか分からない真っ当な勝負にそんな“自信”を持てる瞬間などあり得ない。こんな余裕を持てるのは、余程運が良すぎる人間か……“勝つ事が必然である”と理解している人間のどちらかだけである。 「それで……お願いいたします……」  この場合の紅葉は後者である事は疑いようがない。勝つ事が必然……それは、負けないようにする手段を持っていると言い換えられるし、こうも言いかえる事が出来る……  やはり、イカサマで負けないように仕向けているのだ……と。 「そ? じゃあ早速だけど……脱いで貰える? その……素敵な、真っ赤なド・レ・ス♥」  麗華は頬を赤く染め黙って頭を頷かせる。  そして、促されるままにドレスを留めていた腰ベルトをスルリと外して床に落とし、両手を上げて肘を曲げ……自身の背中にあるボタンを一つずつ外していき、最後に肩の生地を摘まんで上へと引っ張り……ワンピース型の赤いドレスを上へと脱いでいった。  スカートと一体型になっていたそのドレスは、フリルや肩の生地の厚みや横に広がる様な生地構成になっていた為麗華の身体を見た目よりもふくよかに見せていたが、そのドレスを脱ぎ去ると彼女の色白で線の柔らかな生身の肌が露出し見る者の印象を違える。 「まぁまぁ♥ もっとガッシリした体格と思ってたけど……中身は意外と細身で華奢だったのねぇ? 華奢に見えるけど、出るトコはしっかり出てて引っ込むべきトコはちゃんと引っ込んでるのは……流石お嬢様の身体って感じね♪」  衣服を脱ぎ去って下着姿になった麗華に紅葉が意外そうな表情を浮かべてその様に言葉をかける。麗華はその言葉を聞いて恥ずかしがるように頬を赤く染めて、視線から守るものが無くなった身体をモジモジさせてしまう。 「こ、これで……良いのですわよね?」  麗華は脱いだドレスを紅葉の手元まで押しやって渡した。紅葉はそのドレスを軽く畳んでテーブルの端に寄せて置き直す。 「良いわ♥ それじゃあ……この勝負は降りるって事で良いのね?」 「えぇ……」 「新品のトランプを混ぜ直すのは手間だから……シューターから山札を取って来て捨て札も加えてもう一度混ぜて貰える?」 「……はい……」  恥ずかしそうに胸を隠しながら立っていた麗華は、紅葉に促され仕方なく胸から手を離しシューターの中のトランプを引き出していく。そして、降りる事になり使われる事が無かった前回のカードもその山札に混ぜ全体をもう一度シャッフルし直していった。  紅葉はその下着姿でカードをシャッフルしている麗華の官能的な姿を好色な目で見て、彼女を辱める言葉を投げかける。 「身体は華奢なのに胸は中々にボリュームがあるのね? 白いマシュマロの様なブラがはち切れんばかりに膨らんでて……目の保養になるわ~♪」  面白いものを見るかのようなにやけ顔で見つめその様に言われたものだから、麗華は増々顔を赤く染めてカードのシャッフルはたどたどしくなってしまう。 「う、うるさいですわね! あまりジロジロ見ないで下さいまし!!」  人の前で肌を晒すという経験が殆どなかった麗華は、その慣れない視線にムズ痒さを感じ思わず腰をくねらせ嫌がる仕草をして見せてしまう。  紅葉はその仕草を見ても麗華から視線を外そうとはせず、降りることを認めてやった特権だと言わんばかりに彼女の胸やらうなじやら股間やらを舐め回すように凝視していった。 「鎖骨の少し下にホクロ発見♪ 胸の谷間にも小さいのがあるわね? フフフ……もしかしたらその下着の下にも隠れていたりするのかしらぁ?」  見られている事と辱められる事に羞恥心が我慢ならないレベルに達した麗華はシャッフルする事がおろそかになり、カードを何度か落としてしまう事となる。しかしそれでもその視線に耐えるように目を瞑り、どうにか羞恥に耐えカードを混ぜ終えると……全ての山札をシューターの中へと納め直すところまでたどり着く。そして麗華はカードをシューターへ納め終えると、真っ赤になっていた顔で紅葉を睨み見て再び手で胸を隠す仕草を取り直す。 「ほらぁ……次はカード配らなきゃでしょ? さぁさぁ、恥ずかしがらずに隠すのをやめてカードを配って頂戴? でないと勝負が一向に進まないわ♪」  気丈に振る舞おうとする麗華に紅葉は煽るような言葉を吐き口元をニヤつかせてみせる。  麗華はその顔を恨めしそう睨みながらも胸から手を離しシューターへとその手を伸ばしていった。  華奢だが白くてきめ細かな……いかにもお嬢様らしい柔らかそうな美しい肌。  その右手がシューターに伸びていくと、否応なしに腕の根元にある彼女の“ワキ”が開いて見え……そのチラ見えしたワキが紅葉の視線を奪ってしまう。それ見た紅葉は心の中ドキリと心音を高鳴らせ、自分の性癖に歪みが生じている事を悟ってしまう…… 『くすぐりなんて罰を与えているからかなぁ? どうもワキとか足の裏とかを見ると意識が向くようになってしまったわ。なんか……その部位が特別な箇所であるかのように見ちゃうし、無性にエロく感じてもしまう……。フフフ、私もこいつらに毒されてしまったって事かしらね?』  腕が動くたびに形を微妙変える麗華の腋……その腋の動きを見ているだけで紅葉の下腹部に何とも言い難いドロっとした粘液がこびりつく感覚を覚える。熱を帯びたその粘液の様な汁は、すぐさま紅葉の顔をピンク色に染め上げ呼吸にも湿りと熱が含まれるよう変化をきたす。 『あの柔らかそうな腋に指を滑り込ませたら……一体どんな声でこの子は悲鳴を上げてくるのかしら?』   紅葉は生唾を飲み込みながらも麗華の腋を食い入るように見つめその様な欲言を浮かべてしまう。 「く、配りましたわよ! さっさと勝負を始めましょう!」  紅葉の視線に気づき自分の腋を庇うように隠してその様に声を荒げる麗華。紅葉はその言葉にハッと我に返って自分の手元に5枚のカードが既に配られていた事に気付かされる。 『フゥ……♥ もう少しあの腋……見ておきたかったわね……。でもまぁ、この勝負でケリをつければ綾香ちゃんと同じように拘束して好きなように見たりいじくったり出来るようになる訳だし……お楽しみはその時に取っとかなきゃ♥』  紅葉はその様に心の中でほくそ笑みながら自分の手札を捲って役を確認する。その様子をしっかりと確認し麗華もワキを隠すように腕を閉じたままカードに手を伸ばしていく。  そして自分の役を確認した麗華は……思わず唾を呑んで絶句する仕草を取ってしまう。 『ぐっっくっ!! ま、また……役無し……!?』  自分の目に映った手札には役など何一つない……バラバラな数字の羅列しかなかった。  いちお、ハートのAが1枚入っていたから……それを残して交換カードに希望を託して勝負するのもアリかもしれないが…… 『駄目! むやみに勝負を挑んでも何も得られず負けてしまうだけですわ。せめて最初の手に何かしらの役が……小さい手でもいいので役が入っていないと、アレを確認することもできない……』  自分の目論見に結果が伴わず思わずガクリと肩を落とし紅葉の顔を恨めしそうに見る麗華……。紅葉はその表情から彼女の心情を察しニヤニヤと欲に汚れきった笑みを浮かべていく。 「どうしたの? その手札でも納得がいかないのかしら?」  分かり切ったことをあえて言語化して煽るように顔を斜め傾けてわざとらしく聞いてくる紅葉……。  麗華は、その言葉と嫌らしい笑みに諦めの溜息を一つ吐いて、もう一度紅葉に苦々しく告げるしかなかった…… 「このゲームも……降りさせて……いただきますわ……」と。


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