◆とある施設内部。
機関の幹部のみが入ることを許された部屋で、幹部の集いが開かれていた。
それぞれが金の刺繍を施した黒いローブを身に纏い、席につく。
幹部の一人、アスモルトが口を開く。
「ヴァルドはいないか…相変わらず勝手な奴だ。器の準備は順調か…シェルディア」
シェルディアと呼ばれた男──体は細く、ひどく神経質に見えるその男は、ローブを深く被ったままアスモルトの方に視線を送る。
「んん、アスモルト卿が接触したという被検体N、興味深いよぉ。今までは魔獣との適合値はあっても品質がひどく悪かったのに、今は予想を上回る数値で成長しているねぇ」
「次の段階に進めるか…」
「試してみる価値はありそう!!出来れば被検体を直接弄りたいんだけどぉ。彼女の胎内がどう成長したか見てみたいなぁ」
「面倒くせぇ!!さっさと犯せばいいだろうが!!」
テーブルをダン!と叩き──見るからにせっかちそうな男が口を挟む。
他の幹部に比べて、一回りも二回りも体が大きく、暴力で全てを解決してきたと言えば誰もが納得する風体だ。
「グラウロス。貴様では…器の解放は望めん」
「んだと……オレの種植えつけりゃ、一発で充分なんだよ」
グラウロスと呼ばれた男は、アスモルトを明らかに見下していた。
「器は…解放できないと言っている。聞こえているのか?」
「あぁ!!?」
一触即発の雰囲気。
「まぁまぁ、今の被検体Nは、ただ犯すだけじゃダメだよぉ。現に、その検証は被検体で散々やったんだし。器だって複数回の検証で肉体強化はされたようだけど適合率は一切上がらなかった……それが今!!異常な数値を見せ始めてるんだから!!」
急にテンションが上がり、目を爛々と輝かせるシェルディア。
「器には…ある男を接触させている」
「男だぁ?」
一触即発の状況のまま、空気を読まずシェルディアが早口でまくし立てる。
「アスモルト卿から聞いたんだけどぉ、その男っていうのが器に影響を及ぼしているみたいなんだよぉ!!魔獣を差し向けるより全然良い数値がとれている!!これは面白いねぇ!器の子宮に彼の精を注ぎ込んだらどんな効果が出るのか、とても気になるよ!!あぁ、その男も一緒に中を開きたいねぇ!!!」
「器の成長が著しいのは…その男に何かあるようだ。器と男を結合させる」
アスモルトが腕を上げると、後ろからカボチャ頭のハロウィン魔獣が現れる。
「こいつで実証実験を行う…器の熟成を促すかどうか、明らかになるだろう」
「ハッ、こんな弱小魔獣で器が育てば苦労はしねぇ!!オレが直々に躾けてやるよ」
グラウロスが席を立とうとすると、ハロウィン魔獣がスーッと近寄る。
「ギャハハハ!!!!俺にかかれば器なんてあっという間に思い通りよぉぉお!!!お前の出る幕はねぇぇえんだよぉぉぉお!!!」
「──失せろ」
グチャァァァァアア!!!
目にもとまらぬ速さで振るわれたグラウロスの腕、一瞬にしてハロウィ魔獣の頭が吹き飛ぶ。
しかし──
「ギャハハハ!!!効かねぇぇ、効かねぇぇなぁぁああ!!!」
頭が吹き飛んでも、その下卑た笑いはなくならない。
触手が動いたかと思うと、砕けたカボチャ頭がゆっくりと修復されていく。
「今までの魔獣とは違う……こいつには“特殊な能力”を持たせた。器なら必ず罠にかかる」
アスモルトがグラウロスの方を見やる。
「お前がどう動こうか自由だ…我らに序列はない。全ては“ネメルの器”のために」
「言われなくても好きにやる。おい、器の強度はどうなってんだ?壊れやしないだろうなぁ」
記憶も上手く消してるはずだし、胎内もだいぶ頑丈にしたから、卿が世ほどのヘタクソじゃなければ問題ないはずだよぉ、キョホホ」
「殺されてぇのか!!テメェ!!!」
グラウロスの腕は空を切る。シェルディアの体はスーッと透明になりながら消えてしまった。
「器の確認が取れ次第…次のステップへと移る」
アスモルトも席を立ち、部屋にはグラウロスだけが取り残される。
「どいつもこいつも…………器は絶対に俺が手に入れる……!!」
振り上げられた拳は、目の前のテーブルを真っ二つに叩き折った。