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【10月期間限定ストーリー】 ストーリー5:ハロウィンの死闘 選択Aの結末

ナツキと俺は、ある物を用意した後、魔獣が指定してきた場所へと車で向かっていた。

手荒な手段だったが、ナツキは冷静さを取り戻したように見える。

一人で突っ走らせなくて良かった。

「相棒……絶対に倒そうね」

「ああ…勿論だ」

「ハロウィンはさ……」

「うん?」

「子供の頃、お父さんがお菓子を買ってくれた日なんだ。いつも街を救うのに一生懸命で

なかなか一緒にいられなかったけど、ハロウィンの時だけは好きなお菓子を買ってくれた」

「そうか」

「悪い奴らを倒すのに忙しかったから、ハロウィンは一緒に回れなかったけどね!……だから、今は私が楽しいハロウィンを守りたい」

「そうだな」

魔獣を倒す。

各々の想いを胸に秘め、俺たちは指定された場所へと急いだ。

海風が錆びついた鉄骨を鳴らし、古びた工場街は夜の波音に沈んでいた。

ひと気のない裏手の倉庫。

その静けさは、まるで戦いの舞台を待っているかのようだ。

車を止め、俺とナツキは並んで歩きだす。

「……ここだな」

「うん。相棒、必ず倒すよ」

ナツキの真剣な横顔を見た後、脇に転がしている黒いアタッシュケースに視線を移す。

被害女性たちを分析した結果、今回用意したものだ。わざわざ赤いリボンをつけた特注品である。

(これが、多少でも役に立てばいいが……)

橙色の光がゆらりと現れ、異形が姿を現す。

頭部はカボチャ、胴は蠢く触手。人ならざる悪夢のような影。

「ククク……待っていたぞォォ。器とその相棒さんよぉ……! 楽しいハロウィンは、ここからだぁぁ!」

魔獣の声が倉庫に響き渡り、空気が一瞬で淀む。

ナツキは拳を握り、俺に短く言った。

「行くよ、相棒!」

触手が獣の咆哮のように唸りを上げ、うねる度に鉄骨を軋ませて迫ってくる。

錆びた工場の床がきしみ、埃が舞い上がる中、ナツキは一歩も退かず前へ踏み込んだ。

「あんたに慈悲なんてあげない!!速攻で終わらせる!!」

地を蹴る音が鋭く響き、彼女の姿が残像を残して疾走する。

瞬間、青い光が拳に集まり、渦巻くように形を成していく。

光は心臓の鼓動と同調するかのように脈打ち、空気そのものを震わせていた。

「――インパクト・コア・ストライク!!!」

振り抜かれる拳。

一閃、空気が裂け、工場全体を震わせる破裂音が響いた。

拳が魔獣のカボチャ頭を直撃。

ドゴォォォォンッ!!

外殻が粉砕され、破片と濃い粘液が四散する。

床を伝う振動が足元から背骨へ突き上げ、俺は思わず息を呑む。

触手の焦げ臭い匂いが広がり、耳鳴りの中にナツキの声が届く。

「……やった……!? 」

拳を突き抜ける手応えは確かにあった。

だが――。

割れた外殻の奥から、橙色の光が滲み出していた。露わになったのは、ひび一つ入らない不気味な核。鼓動のように脈打ち、淡い光を放ちながら不敵に輝いている。

次の瞬間、触手がうねりを増し、核を守るように一斉に覆いかぶさった。

その動きは再生の儀式のようで、みるみるうちに砕けた外殻を埋め戻していく。

「な……効いてない!?」

ナツキの声が震え、拳を引いた手が小さく痙攣した。

確かに命中した。衝撃も、破壊も、あった。

だが――届いていない。

魔獣の笑い声が倉庫に反響する。

「ギャハハハァァ!! ただの打撃で俺を砕けると思ったかァァ!? 俺は“望み”が達成されるまで死なねぇ!!」

ぐちゅ、ぐちゅ……と粘液が再生を告げる音が続く。ボコ、ボコボコ……

カボチャ頭はただ再生するだけでなく、人間の何倍にも大きさが膨れ上がっていく。

魔獣はあっという間にナツキの3倍もの大きさに変貌した。

ナツキの肩が大きく上下し、青い光が拳から霧のように散って消えていく。

「……相棒……どうすればいいの……?」

その声には苛立ちも悔しさも混じっていたが、何より――絶望の色が濃かった。

魔獣の笑い声が鉄骨を震わせるように響き渡った。

「ギャハハハ!!!この体にビビったかぁ?……俺の番だなァァ!トリック……オア……トリートォォ……お菓子をよこせぇぇ!!」

魔獣の低い声が響き渡る。巨体から出る音で空気がざわつき、床を這う影までもがざわめく。

ナツキは歯を食いしばり、即座に叫んだ。

「あんたにあげるお菓子なんかない!!」

その瞬間――ナツキの体がふっと軽くなる。

「え……? 体が……軽い……?」

だが同時に、ナツキの首元に黒い紋様が浮かび上がった。

炎に焼き付けられたように皮膚の上で蠢き、じわじわと広がっていく。

「ナツキ! その印は……!」

俺は息を呑んだ。

脳裏によみがえる、先に見た被害女性たちの姿。彼女らの首に刻まれていた不気味な黒紋。それと同じだ。

「相棒、なんだかよくわからないけど…体がすごい軽い!!」

「ナツキ、気を付けろ!!それはおそらく呪いだ!体が軽いのにも、何かわけがある!!」

魔獣は満足げに喉を鳴らした。

「ギャハハハハ!!相棒は察しがいいなぁあ。だが、それでお前らに何ができる?」

魔獣が再び声を張り上げる。

「トリック・オア・トリート……二度目だぁぁ!! 答えろォォ!!」

ナツキの瞳が揺れた。唇が再び「あげない」と動こうとする。

だがその刹那、俺は咄嗟に叫んでいた。

「ナツキ、答えるな! 今度は俺が言う!!」

魔獣の視線を睨み返し、声を張り上げる。

「トリックだ!!」

今度の異変は俺の首元に刻まれた。ジリジリと焼けるような感覚が残る。

魔獣が愉悦に震える声をあげる。

「ククク……いいぞォォ! 器を守るつもりかァ? だがその代償はお前に刻まれるのさァァ!!さぁ、トリック・オア・トリート……三度目だァァァ!!!」

魔獣の声が轟き、触手がうねる。

「今回もトリックだ」

ジュウッ……

再び首元に紋様が浮かび上がる。

「くっ……」

首元に痛みは残るが、それと同時に体がかなり軽くなった気がする。

このまま呪いを受け続けていれば、俺は奴の操り人形になるだろう。

被害女性の様子を見ても、その可能性が非常に高い。

「さぁ、答えろぉぉ!!トリック・オア・トリート!!!」

何故この魔獣がそこまでトリックオアトリートにこだわるのかはわからない。

だが、“なにかのトリガー”に使っているのは明白だった。

「ト──」

「あぁ?なんだぁぁあ?」

「トリートだ。こいつをくれてやるよ」

俺は脇に置いてあったアタッシュケースを魔獣に向けて放り投げる。

力が強化された分、遠くから投げ込むことができた。ケースは魔獣の口の中へと吸い込まれていく。

「なんだとぉぉお!!魔獣に渡すお菓子なんてあるはずがねぇだろ!!」

「開けてみな、ケースいっぱいのキャンディだ」

カチッ

ケースが開いたかと思うと──

ボゴォォォォンン!!!

ケースが勢いよく弾け飛び、カボチャの口の中で大爆発が起きる。

「グォォォオオオオ!!!」

「ただし、“爆弾付き”のキャンディだがな」

「オゴォォォオオオ!!!」

魔獣の周りから、霊魂のような青白い発光体が溢れ出す。

魔獣から解放されたかのように、かすかな光を放ちながら天に昇っていく。

その光景は奇しくも幻想的であった。

ケースの爆発の直撃を受けて、ハロウィン魔獣の体は崩壊寸前だった。

魔獣にとっては想定外のダメージだったと見える。

対魔獣用の成分を多分に含んだキャンディが魔獣の再生を大幅に遅らせている。これが核にまで届いていれば魔獣を倒せたのだが──。

即席だったせいか、あと一歩届かなかったようだ。魔獣本体の核はいまだ形を保っている。

「くそぉぉおお……だが残念だったなぁあ。この程度じゃ俺は死なないんだよぉおお!!」

「ちっ……」

俺の体にも異変が起き始める。さっきまであんなに軽かった体が、全身鉛になったようにズシリと重くなり一歩も動けなくなる。

「くっ…これは……」

「やっと効きやがったかぁあ!そう、遅効性の呪いだよぉぉ!!最初は身体能力を上げる効果と見せかけて全身に一気に呪いを巡らせるための仕掛けだったのさぁ、準備が出来たら一気に体の自由を奪う寸法よぉお!!!」

魔獣はしぶとく徐々に体を修復していく。

「体が治ったらまずお前から串刺しにしてやる!!器の促進剤だかなんだか知らねぇが、俺をこんな体にしやがって!!」

「くっ……」

そこにナツキがゆっくりと歩み寄る。

ナツキも呪いを受けて首元が黒い滲んでいるが、俺より少ない呪いのせいかまだ動けるようだ。

「なんだぁ……お前はこいつを殺したあとにゆっくり犯してやるからよぉ、黙って見てろや」

「……約束したんだ」

「あぁ?」

「あんたは私が必ず倒す……相棒が、そのために準備をしてくれた」

ナツキの瞳に怒りの炎が宿る。

「相棒がちゃんと調べてくれた。魔獣には弱点となる成分があるって。あんたが今頭から被ってる飴にも、その成分はちゃんと入ってる…」

ナツキはゆっくりと体を動かしながら、ケースの爆発で飛び散ったドロドロに溶けた飴玉に右拳を浸す。

「クソ、お前らにやられる俺様じゃねぇえ!!!」

「ナツキッ!!」

ナツキ目掛けて飛んでいく触手。その時、俺とナツキは不思議な光景に出会った。

「え……?」

青白い光が、人の形を象ったかと思うと、遮るように触手の動きを止める。

「……お父…さん……?」

かすかに聞こえたナツキの声。

「…ナツキ、今だ!インパクトを叩きこめ!!!その拳ならいける!!」

ナツキは気付いていた。

“魔獣対策を施した飴をまとった拳”なら、直接核を打ち砕くことができる。

「ハロウィンは、元々魔除けをするために行われた祭りなんだ。魔獣のお前がしていい恰好じゃない!!」

ナツキの拳が再び青白く光り、溶けた飴玉が一気に沸騰して虹色の光を放ち出す。

「ちょっ、待て、お菓子なら──」

「キャンディ・コアァア・ストライクゥゥ!!!!」

ガガガガッ!!!ガシュゥゥゥウウウウンン!!!

直りかけている触手を吹き飛ばし、ナツキの拳が魔獣の核を粉々に打ち砕いた。

「うぉぉぉおお!!おのれ、こんな器ごときに……」

核を砕かれ、形を保てずに崩壊していく魔獣。

最後には固まった飴玉と黒いマントだけが地面に残った。

「……勝ったね」

「なんとかな……」

呪いが解け、動けるようになった体を起こし、ナツキの元へと近づく。

「…ん」

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