これはナツキに相棒と出会う前のお話──。
彼女の敵は、機関の魔獣だけではなく至る所に潜んでいる。
相棒と出会う前は、機関の情報を得るためにも単独で調査が必要だった。時には体を使った交渉事も伴う。
リ・ガーズは、ナツキが魔獣に敗北した後の後処理担当。市民の目にさらされないようにすることが彼らの仕事。なぜかリ・ガーズの隊員たちはナツキが“魔獣に凌辱されても殺されない”ということを知っているようだった。
驚くべきことに、リ・ガーズはナツキにとって味方ではなかったのだ。
頼れる人はいない。それゆえ、時には危険な取引に身を投じることもあった。
今日は機関の貴重な施設の情報を得られると常連の情報屋からタレコミがあった。ナツキがその情報を得られる条件はひとつ。
【指定された衣装を着てビルの屋上階まで来ること。】
「何この衣装……」
ナツキが着させられたのは、銀色に輝く『スリングショット』と呼ばれる、とても布地面積の少ない水着だった。ひざ下まで隠すコートの下にはその下着だけ。
「下の毛……完全にはみ出ちゃってるし……」
だから“下の毛は剃らずに放置してくること”と指示があったのか、ナツキは自分のしていることを改めて認識してたまらなく恥ずかしくなった。
出来ればやりたくなかった。
しかし、この機会を逃すと地域一帯の市民は助からない。
催淫ガスを街に撒こうと画策している機関の施設を一刻も早く潰さなければいけなかった。
これから会う好事家が持っている情報は、それを叶えるものだった。
情報屋が言うには「心配するな。犯されはしない。ただ、“見られる”だけだ」
不気味なことを良い残し、情報屋は去っていった。
「あたしの体で済むんなら……安いもんだよね……」
父さんのためにも、この街は絶対に守らないといけない。たとえ“自分がどうなっても”。
◇

「実にいいね」
好事家と呼ばれる人物は、意外にも温厚な人物だった。ふくよかな体に品の良いスーツを着たいかにもお金持ちと見える男。豪華な一室には男だけしかいなかった。
(凄い部屋…一体いくらするんだろ……)
部屋に入ったナツキはコートを脱ぎ、指示通りしゃがんで見せる。最初は胸と股を手で隠していたが、隠さないように優しく指示された。
「私は綺麗な女性の陰毛が無造作に伸びているのが大好きなんだ」
まともな人間ではないだろう。
そんな恥ずかしいことも臆面なく言ってのける。なにも恥ずかしいことは言っていない、とでもいうかのように堂々とした姿だ。
「は、はぁ……」
ナツキは黙って体を見せる行為を我慢する。

股に布地が食い込み、クリトリスがかすかに刺激され少し身をよじる。
「君のために用意したんだけど、ピッタリ似合ってよかったよ」
「あ、ありがとうございます……」
感謝をするべきなのか。困惑しながらナツキは言葉を返す。
(早く終わってほしい……)
この時間が永遠にも感じられる。
「うん、実に良い体だ。直接目の前で見れて本当に良かった」
男は目を少年のように爛々と輝かせる。
「魔獣と戦える女性がいるというのは本当だったんだ。この体つき、さぞしなやかなんだろうな」
「ハハハ……」

「よし、私の目に間違いはなかった。約束通り情報を渡そう」
「え、あ……ありがとうございます」
もう終わり、という言葉があやうく出そうになったが、すぐに終わるならそれでいい。
見られ続けたせいか股が少し濡れてきているような気がする。気付かれたくない。
男はナツキにUSBメモリを手渡す。
「今度また私が協力できることがあれば、ここに来てまた体を見せてほしい」
「そ、そうですね……」
その機会は次に訪れないでほしい、と思いながら、ここで断っては情報源が断たれてしまうと曖昧な返事でごまかした。
◇
ナツキがいなくなった部屋。
男がおもむろに携帯電話を手に取る。
「ちゃんと撮れた?」
「はい、360度 上からも下からも映像撮れてます」
側近らしき男の声。
「良かった。私の予想通り彼女は素晴らしいね」
「もう帰してしまってよろしかったのですか」
「そりゃ、お楽しみはゆっくり味わおうよ」
男はにっこりと笑う。
「自分から頼み込むくらいにさ、したいじゃない。簡単に股を開いては面白くないよ、ヒーローは」
「そういうものですか」
「そうさ、私が求める彼女の見たこともない表情、そして衣装。この取り合わせが組み合わさった時、とてつもない感動が待っているんだろうね」
嬉しそうに、無邪気に男は笑う。
男の願望は、ナツキの知らないところで大きく膨らんでいくのであった。