SamuZai
シカク
シカク

fanbox


悪の種を植える -1-

この世界では何の突然変異か、異能の力を持つ人間がいる。その力は不思議とされ、どうやって手に入れるのか、人間の神秘的な謎であった。その力を正義の為に使う人間もいれば、勿論悪事に使う人間もいる。とある世界の権威ある研究チームはそんな異能に関しての研究を続けていた。誰もが異能の力を持つことが出来れば最強の軍隊を作ることが出来る。そんな思惑があり、国は異能の研究チームに支援惜しみなく注いでいた。そしてとあるチームの主な研究対象はとある日に落ちた隕石の解析だった。小石程度の大きさだが、紫に不気味に光るそれはダークマターの力を吸収している事からそのままダークマターと呼ばれ、異能が発せられる時に放たれるエネルギーと似ていた事からこの研究チームの元へと送られた。郊外の研究施設で何年もダークマターを研究していたが成果は出ず、それどころか突然その光は消え、ダークマターはただの小石になった。研究チームはその責任で早々に解散させられ、研究員全員が謎の行方不明となった。 それから数年後、すっかり廃墟と化したダークマターの研究施設は地元で有名な心霊スポットとなっていた。そこに18歳の青年、湯浅優(ユアサスグル)は動画撮影の為に1人で訪れていた。スグルは動画サイトに投稿を定期的にする配信者で今日もその為に心霊スポットに訪れていた。 (うわ~すっげぇ不気味。まだ昼なのに中凄い暗いじゃん。昼と夜に分けて撮影しようかと思ってたけど夜撮るの止めようかな) スグルは動画を撮る前に一度どんなものかを確認するために侵入したのだが、思ったよりも施設内は暗かったため足取りが重くなっていた。更に元研究施設という事もあり、不気味な雰囲気は更に増していてスグルにより恐怖をより感じさせている。 (うん、やばい‥・。でも折角来たし‥・。ひと部屋。うん、ひと部屋だけ覗いてみて決めよう) スグルは再生数と自分の身を天秤に掛けながらもちょっとずつ進み、導かれるようにエントランスから少し奥にある部屋にたどり着いた。そして深呼吸をしてゆっくり扉を開けた。 突然なにかが出てくることはなく、スグルは一安心する。部屋に足を踏み入れて懐中電灯の明かりをあちらこちらに向けてみる。棚やテーブルがあちこちにあり、そこらにビーカーや試験管などが散乱していた。それから辺りをしばらく照らして何も起きない。スグルは少し余裕が出てきて何時でも出れるように扉のすぐ近くにいた位置から部屋の奥へと進む。 (結局は面白おかしく広がっただけの噂でただの廃墟か?) 懐中電灯で照らされるのは埃まみれの棚や机や用具ばかり。これくらいなら撮影出来そうだとスグルがホッと一安心ついたその時、突然紫色に光る発光体がスグルの目に写る。 「うわぁぁっ!で、でたっ!」 叫び声を上げてスグルはすぐに部屋から出ようとするが何故か扉はかたく開けることが出来ない。 「えっ!?なんで!?なんでっ!?幽霊さんごめんなさいごめんなさい!」 ガチャガチャと押したり引いたりするも扉はビクともしない。その間に発光体はふよふよ浮きながらスグルへと近付いてくる。 「うえっ!オレ死ぬの?なにこれ?なにこれ?」 スグルは部屋から出れないと諦めて扉を背にその発光体と見合わせる。だが発光体はスグルとの距離が1メートル程になるとその場で浮遊するだけになった。 「えっ?どう...なった...これ、なに...?」 スグルは相変わらず怪しく光る物体にビビるがしばらくその場で浮遊するだけの物体に少し安心感を取り戻す。 「扉...開かないかな...」 そう言って再び扉に開けようと振り返ろうとした瞬間、物体から光が飛び出しスグルの額に打ち込まれる。スグルはその衝撃で顔が天井へと向いた。 「ひぐぅっ!!」 白目を剥いて撃ち込まれた額からは血管が浮き出ている。スグルが撃ち込まれた光の正体はダークマター石に住みついてカモフラージュしていた宇宙生命体だ。ダークマターが醸し出す光を利用して研究者たちの目を欺いていたのだ。数ミリしかないその生物はダークマターの力を吸収すると自らを石と擬態させ、あたかもダークマターの力が無くなったものだと思わした。そこからその宇宙生命体はずっとこの地球に落ちてから生きるために自分と適合する人間を待っていたのだ。そしてその適合者として現れたのがスグルだ。嬉々とした宇宙生命体はスグルに飛びつき、その体内へと侵入したのだ。 スグルは全身をブルブルと痙攣させながらその生命体と融合していく。 「ア"っ…ア"っ…あっ…」 宇宙生命体にとって人間の体を支配することは可能だったが、それをしなかったのはそのエネルギーがあまり残っていなかったのと、そのまま無理やり支配という形を取ると肉体の負担が大きかったり失敗する可能性もあったからだ。なので宇宙生命体はスグルとの融合という選択をした。意識や肉体を統合させていき、人間よりもはるかに優れた存在へとスグルは進化していく。 しばらくすると痙攣が収まり、スグルの瞳も元に戻った。スグルは自分の体をペタペタと感触を確かめるように触りニヤリと笑みを浮かべる。 「最高だなこの体。長い間待ったかいがあった。すごい適合してるしオレってラッキーだな。オレとしての自我もちゃんとあるしオレの力も、ダークマターの力も使えるな」 融合したスグルと宇宙生命体は主格が混在しながらも進化した自分の肉体と意思を確認していく。その中でスグルは自分の手を木の枝のように変えて見せる。そしてそれをムチのようにしなやかに操ってみせた。スグルは異能の力を持っていない。この力は宇宙生命体による力だ。この宇宙生命体はプラント星人と呼ばれる生命体で生物も存在しない惑星の地底でひっそりと活動していた星人だ。今回スグルと融合した個体は、数が少なく絶滅までのカウントダウンが迫っている自分たち生命体の消滅していく運命に抗おうとして、そしてただ終わりを待つ仲間たちにも嫌気がさして自分だけでも生き延びてやろうと思い飛び出した。そこからたまたま巡りあったダークマターの隕石として落ちたのはプラント星人にとっては知らない惑星だったが、とても快適な気候と環境がある惑星に落ちたことに喜んだ。だが、そこから人間という見たこともない生物に出会い、プラント星人は再び絶望した。自分より遥かに大きい生命体。さらには高い知能もある。プラント星人はじっと身を潜めることしか出来なかった。だが、今まで生まれ持った能力でも使いどころが一切なかった寄生能力に可能性をプラント星人は感じたのだ。この人間という生命体に寄生出来そうだと。だが研究者たちではどうも合わないという直感をプラント星人は感じ取った。そこからはじっと自分と適合する人間が来るのを待つ日々。だんだんと生命エネルギーも無くなってきたころ、ついに最高の適合者が現れた。プラント星人は歓喜し、スグルへと飛びついた。そして今、スグルと融合する形でプラント人間へと進化して奇跡的に見事生き延びたのだ。


More Creators