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シカク
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Cosmolapt -3- (完)

「おはようございます!」 「おはよう。昨日はゆっくり休めたか?」 「はい!」 蒼汰がデストのアジトを訪れた翌日。蒼汰はヒーローの仮面を被り、陽斗の研修に従事していた。まさか目の前の先輩が既に敵の組織に堕ちた事など露知らず、陽斗は休み明け一発目の気持ちの良い挨拶を蒼汰にする。軽く1日の予定を確認した後、2人はパトロールに出た。パトロールでは応援する声援もあれば、化け物と罵られる事もあった。だけど陽斗は苦い表情を浮かべながらも、ちゃんとことを荒立てることなく対応をしていた。パトロールに帰ってからの事務にトレーニングと、今日の研修も問題なく終えた。 「2人いっしょですか?俺は全然気にしないので、今もうやっちゃっていいですよ」 定時間近、研修を担当している職員が少し打ち合わせをしたいと蒼汰と陽斗に話を持ち掛ける。もう退勤の時間なので、自宅に送るついでに話をしたいと。その提案に陽斗は少し困惑した返事をしていた。陽斗はわざわざ帰りに先輩を巻き込んでするものじゃないと思い、その職員の提案を躱していた。だがこれは蒼汰が職員に提案させた事。ダストの一員として作戦を遂行するに必要な事。なので蒼汰が陽斗の提案に乗るはずもなく、職員の提案を採用するように話を持っていく。 「いいんじゃないか?どうせ同じマンションなんだし、基地の中では話せない不満とかあれば聞きたいし」 「そんなっ、ないっスよ!でも蒼汰さんが言うならお言葉に甘えて…」 陽斗が渋々承諾すると、蒼汰と職員はニヤリと笑みを浮かべる。そうして職員の運転で今日は帰宅する流れとなった。 車に乗り、出発すると職員から連絡事項が伝えられる。その内容は特に急ぎのものは無く、陽斗は聞きながら急ぐ事かと、少し疑問が湧き上がっていた。それに助手席にある大きなキャリーボックスにも、陽斗は気を取られていた。だが、機構関係の重要な物かと、それに突っ込む事はなかった。その後、蒼汰から実際ヒーローとなってどうだ?と、陽斗に話が振られる。 「そうですね。まだ何とも。ヒーローになりましたけど、想定された訓練でしかこの力も使ったこと無いので、実践になるとどうなのかなって不安はまだあります」 下を向いて不安げな表情で語るその姿に、やはり普段は元気に見せていても不安だったのだと蒼汰は共感した。 (かつての自分もそうだった…だけど今は違う…。偉大な指導者の元、俺は…。その不安、すぐに消してやるからな) 「そうか…。でも安心してくれ。その不安、すぐに消してやるよっ!」 蒼汰はポケットから小型のスタンガンを取り出し、それを陽斗の脇腹へと突き刺した。 「がァっ…、あァっ…!」 強烈な痛みと痺れが、陽斗の全身を襲う。ドクター特製のスタンガンは象さえも一時的に麻痺させる代物だ。いくら鍛えられた陽斗でも、不意に食らえば動けなくなる。そしてその隙に蒼汰は陽斗の手に腕輪を嵌める。その腕輪は蒼汰も体験したコスモパワーを封じる物質で作られた物だ。体も力も麻痺した陽斗はそのまま座席に体を預ける事になり、半目になりながら蒼汰を睨んでいた。 「ま、さか…ニセ、モノ…?」 あの蒼汰が仲間にこんな事をするはずない。陽斗はそう思いながら絞り出す言葉に、無情にも蒼汰は現実を突きつける。 「いや、俺は本物の新田蒼汰だ。ちゃんとコスモパワーも、ほら、あるだろ?」 ニヤニヤと今までメテオ機構では誰も見た事ないであろう嫌らしい笑みを浮かべながら、蒼汰は手から氷を作り出す。 「な、ん…で…」 信号が赤で車が止まると、職員が助手席にあるキャリーボックスからヘッドギアを取り出す。蒼汰はそれを受け取ると、それを陽斗に装着する。 「生まれ変わる時間だ」 その言葉と共に、陽斗の視界は色鮮やかに染まった。 10分後。間もなく2人が住むマンションに着く頃。蒼汰は俯く陽斗に嵌めた腕輪を取って、ヘッドギアを取り外した。そして蒼汰は体を預けて俯く陽斗に声を掛ける。 「ヒーローになった所悪いけど、これからデストの一員として働いてもらう」 「もちろんっすよ。ルイン様の下僕として何でもやります!」 顔を上げながら答えるその表情は、陽斗に相応しくない怪しい笑みで染まっていた。 数日後、蒼汰と陽斗は休日を使ってデストのアジトへと来ていた。その目的は蒼汰が辿った道を陽斗にも辿らせる為だ。蒼汰とドクターはあのカプセルの前で陽斗が施術される様子を眺めている。 「はい...俺はルイン様の下僕...ルイン様の命令は絶対です...もちろんです…おほッ♡...ルイン様は絶対です…そうッス…俺はルイン様に従順な犬...はい...はい...ルイン様が俺の中心...組織繁栄の為に...ルイン様の為に強く...はい...嬉しいです...褒められると...♡んアッ…♡あはっ…♡支配…嬉しい...♡もっと…崇拝を…敬愛を…忠誠を...忠誠を...忠誠を…♡あへっ…♡」 「流石だよ。こんなにも早く新しいヒーローを連れてくるなんて」 「ヒーローと言ってもまだデビューしたての新人だけどな。ちょうど研修を受け持ってたから」 「この調子で頼むよ」 「あぁ、他のヒーローや職員もジワジワとルイン様の忠実な兵士にしてやるさ」 「ハハッ、そうだね。計画は動き出したばっか。今はまだ辛抱強く慎重に」 「この世界をルイン様のモノにするために」 「そう、まずは邪魔なメテオ機構を組織の支配下に置かないとね」 「あぁ、必ず」 匠の言葉に蒼汰が強い覚悟を口にすると、機械音が鳴り止み、陽斗の処置が終わった。 2年後。とある白昼のメテオ機構は不気味な程静かだった。外部からの入口は遮断され、例え関係者であろうと中へと入ることが出来ず、妨害電波によって内部との連絡も取れなくなっていた。 ついにデストがこのメテオ機構を乗っ取るために、工作員の仲間たちと共に謀反を起こしたのだ。ここ2年でメテオ機構の大半の職員は既にデストの構成員として洗脳され、そして半数のヒーロー達も同じくデストの手に堕ちていた。2年を掛けてじっくりと立てられた作戦はルインの計算通りに事が運ばれる結果となった。不意の奇襲、しかも基地内からの攻撃にメテオ機構は為す術なく、制圧されていく。洗脳された職員も戦闘員としての教育と訓練を施されていた事もあって、基地内にいる職員たちを制圧するのは簡単であった。そしてヒーロー達も数分前まで仲間だと思っていた同じヒーローからの不意打ちに呆気なく捕らえられた。 「ぐはっ…!」 「さあ、ここで雄大さんも大人しくしてて下さいね」 陽斗が楽しそうに拘束したヒーローを放り投げる。捕らえられたヒーローが司令室へと集められていた。捕らえられたヒーローは、体と手足を固定され、動く事が出来ない。そしてコスモパワーも拘束具に仕込まれた物質によって発動する事も叶わなかった。 「流石暴れ馬。最後まで見事な抵抗だな。陽斗よくやった。雄大さんで基地内にいるヒーローは最後だ」 「ッス!!」 「お前ら!何の真似だっ!!それに、その格好は…」 捕らえられたヒーロー達は蒼汰や陽斗達、裏切り者のヒーローを睨み付ける。そう、彼らは今、デストのRノイド部隊としての黒を基調としたタイトスーツを身にまとっている。機能性を重視され、体のラインにピッタリと沿うタイトスーツ。肩から手首までをしっかりと覆い、肘や肩部分には軽量の装甲が内蔵されている蒼汰が着用するタイプと、陽斗が着用する袖なしタイプのタイプがある。袖なしは露出した腕に一体型の黒いグローブとサポーターを装着しており、関節を保護しながらも攻撃や防御の動きを補助する仕様となっている。両タイプとも胸元には組織のエンブレムが刻まれていて、腰にはベルトが巻かれている。そしてスカウターも装着していて、まさに悪の組織が身に纏う様な、ヒーローとはかけ離れた威圧のあるスーツ姿に機構の仲間達は、絶望を隠せなかった。 「これからここはデスト基地メテオ機構支部となります。貴方たちヒーローはルイン様に跪き、これからはRノイドとして働いてもらいます。ルイン様直属の部隊、これは名誉な事ですよ」 「誰がっ悪の組織なんかにっ!おめェらふざけてねぇでさっさと正気に戻れよっ!!」 「残念ながら、今のこの姿でルイン様の命令に従う事が俺の正気です。雄大さんもすぐに矯正してあげますよ。陽斗」 「ッス!!」 蒼汰の合図に陽斗はデスト式の敬礼で返すと、ヘッドギアを雄大へと被せる。そしてそのスイッチをオンにすると、機械音とともに装着者の脳内を矯正していく。そしてこの洗脳処置、前では10分はかかっていたであろう施術も、この2年で進化を遂げていた。1分経つと雄大はブツブツと夢見心地にルインへの忠誠の言葉を呟き始める。そして3分もするとヘッドギアの機械音は鳴り止んで、施術は完了となる。今では3分もあればその洗脳処置が済むのだ。 「どうですか、感想は」 蒼汰はもう立派に悪にふさわしい微笑みで雄大に問う。 「あぁっ!最高だぜ!馬鹿な俺でもルイン様の偉大さが体の芯から染み込んで理解出来たぜっ!蒼汰っ!俺も手伝わせてくれっ!ルイン様の為に早く働きてぇ!ってかデストじゃ蒼汰の方が先輩か!」 「雄大さん、心配しなくても外に出動中のヒーローや残りの部隊たちを捕まえるのに働いてもらいますよ」 「しゃっ!そう来ないとなっ!」 雄大は処置前とは一転、すっかりデストの一員として洗脳されていた。この変わり様に他のヒーローたちは更に顔を青くしていた。 「さて、ルイン様が来る前にみんなにもデストの一員として矯正しないと」 蒼汰は捕らわれるヒーローたちを見下げて笑いかける。その言葉にRノイド部隊の元ヒーローたちは、手に持つヘッドギアを彼らに装着していくのだった。 「作戦通り、制圧したようだな」 「はっ!ご命令通り。このメテオ機構はルイン様のモノとなりました。後は外の機構の者たちを捕らえれば作戦完了となります」 司令室へと訪れたルインと匠に、Rノイド部隊、そしてその後ろに控えるデストの一員として洗脳されたヒーロー達が揃って跪く。 「コスモパワーが自分たちだけの力と勘違いし、奢った結果だな。だが、最後まで油断はするなよ」 「はっ!」 「さて、さっき処理したヒーローたちは大丈夫そうか?」 「はい、この様子だと例外なくカプセルへの再教育までは問題ないと思われます」 「なら今日処置したヒーローたちは作戦が終了次第順番に施術としよう。作戦終了後、ドクターの指示に従え」 蒼汰の報告にルインは納得したように頷いて、後ろに控えるヒーロー達へと指示を飛ばす。 『はっ!ルイン様の完全なる支配を受けるため、ドクターの指示に従います』 「まあこっちの準備は何時でも大丈夫だから、君たちは急がずキチンと作戦を遂行してね」 『はっ!!』 「では、詰めと行こうか」 ルインの言葉にRノイド部隊とヒーロー達は動き出す。そしてそれは構成員全員と基地内にいたデストの構成員となった職員にも伝えられた。 2年間、じっくりと進められた作戦はメテオ機構が抵抗する間もなく終了を迎えた。これによってこの国は大きく変わっていく。デストの一部となったメテオ機構は警察と軍隊をすぐさま吸収し、メテオ機構は巨大な軍事組織へと変貌した。もちろん所属する隊員たちはヘッドギアによる処置を受けて、ルインへと忠誠を誓う忠実な兵士へと洗脳された。そしてコスモパワーを持つ人間は、新人類Rノイドとして畏敬の念の抱くように強制され、デストのトップに立つルインは指導者として君臨した。その後、デスト本部、メテオ機構支部がある街からその支配は広がり、従わない者や街は躊躇なく蹂躙されていった。コスモパワーを持つ子どももデストの保護下へと置かれ、ヘッドギアによる洗脳や先輩たちの教育や訓練により、Rノイド部隊は更に凶悪な部隊へと成長していく。またルインや匠のような判明しづらい能力者を発見する為の装置も作られ、組織自体も発展していった。デストが国を征服するのに時間は掛からなかった。 こうして国は完全にデストの手中に落ちた。 街も人も思想も、全てがルインの支配下に置かれ、反抗の芽はことごとく摘み取られた。 そしてルインの名は、指導者として永遠に刻まれることとなった。


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