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【イラスト+小説】先輩は私の着せ替え人形 (2)

「きゃぁあぁっ!!」  よく晴れた八月の午後、純白のワンピースを翻す一陣の風。不意に強襲してきた突風に少女は慌てふためき、風に泳ぎ暴れるワンピースの裾を必死に押さえつけようとする。  幸いその姿を目に止めた者はその時私以外にはいなかったが、もし他の誰かに見られていたならば、本来ショーツに包まれていなければならないはずのその部分に今、何の布地も存在していないという衝撃的な事実が、文字通り丸見えになってしまっていたことだろう。そしてさらにその一瞬、太ももの隙間にちらりと見えた、普通の少女には付いているはずがない「あるモノ」にも気が付かれていたとしたならば……これはちょっと本当にシャレにならない。 「ほーら先輩。今日は風が強いんですから、お洋服の裾にちゃんと気を付けていないと、大事なところが丸見えになっちゃいますよ?」 「うぅあうぅあぅぁううぅぅぅ……!」  もうとっくに強風は過ぎ去ってしまったと言うのに、薄い布地をぎゅうっと太ももに押さえつけたまま、涙目でぷるぷると震える少女。極度の羞恥心と緊張感からか、もはや彼女が発する声は言葉の体を成していない。 「ていうか先輩『きゃああっ!』って……もうすっかり女の子になりきっちゃってるじゃないですか」 「ち、違うっ!そんなんじゃないよ!……うう、どうしてこんなことに……」  週末の陽気に浮き足立った人々で賑わう街の中。私は前々から楽しみに計画していた、先輩と二人っきりの「女の子同士のデート」をついに敢行していた。  若者向けのカフェや服飾店が軒を連ねる、活気に満ちた通りを歩くふたりの女の子。そのうちの一人は私、宮崎カナエ。今年の春に大学に入ったばかりの花の女子大生。同年代の子と比べても背が高い方で、自分で言うのも何だがわりと美人の部類に入ると思う。中学生の頃から伸ばしている長い黒髪が自慢だ。  そしてもうひとりの女の子……休日のデートにはあまりにも不釣り合いな冷や汗を顔に浮かべ、おぼつかない足取りで私の横を歩く華奢で背の低い女の子。一見ローティーンの少女にも見える可憐なこの生き物の戸籍上の名前は香川ミキタカ。他の人からすれば信じられないことだろうが、彼女は私の大学の先輩で、れっきとした成人男性(!)である。つまり本来は「彼女」でも「女の子」でもないということだ。  先輩に無理やり女児服を着せて、その姿を写真に収めるという辱めを受けさせたのが大体半月ほど前のこと。その時撮った写真を脅迫材料にして、今日、私は先輩に女装&ノーパンという恥ずかしすぎる格好を強制した上で野外に連れ出していた(我ながら酷い話だとは思う)。  今先輩に着せている衣装は、またも私のお下がりであるシンプルな白のワンピース。それに加えて白のニーソックスまで履かせるというコテコテのあざと可愛い過ぎるコーデ。前と同様に上部で二つに結んだ髪の毛は、彼の(彼女の)あどけない少女性をより一層引き立たせている。  こんなベタな格好をした女の子、今どき一部のアニメ以外ではほとんど見かけないけれど、線が細く華奢で、どこか儚げな雰囲気すらその身にまとった先輩は、このような衣装でさえもバッチリと着こなしてしまう。  もっとも本人に「着こなしている」という意識などさらさらないであろうことは、必要以上に周囲の目を気にしながらおどおどと私に付いてくる先輩の様子を見れば一目瞭然だ。本当に私より年上なのか?と疑ってしまうほどの頼りなさげな先輩の立ち居振る舞いは、その美少女然とした容姿と相まって実に庇護欲を掻き立てられる。それと同時にふつふつと心の中に湧き上がってくるのは、自分でも制御しきれないほどの強烈な加虐欲。そう、大学に入学して早々に出会ったこの愛らしい生き物を、私はあらゆる手段でイジメてみたくてたまらないのだ。 「ねぇ……もう帰ろうよぉ……」  駄々を捏ねる子供のように、震え声で私に呼びかける先輩。 「何言ってるんですか。デートはまだ始まったばっかりですよ?」 「でも……股がスースーして落ち着かないし、僕もう恥ずかしすぎて……死んじゃいそう……」 「いいじゃないですか。夏にぴったりの涼しげな格好で」 「そういう話じゃないでしょ!これじゃ……まるで僕、へ、変態みたいじゃないか……。それに、みんな僕の方をちらちら見てる気がするし…きっとバレてるんだよ……」 「これだけ似合っててバレてるわけないじゃないですか。見られてるとしたらそれは先輩が美少女すぎるからですよ。ていうか先輩はフツウに変態でしょう?このあいだ私の服着て勃起してたこと、忘れたとは言わせませんよ?」 「あっ、あれはっ……!何かの間違いだよ!僕にそんな趣味ないもん、全然っ!!」 「はいはい、全然説得力ないですけどね〜」 「本当だってば!」 「もうっ……さっきから先輩は文句ばっかり……。いつまでもそんなこと言ってると、この間の写真、大学の皆さんに見せちゃいますよ?」 「!!そっ、それだけはやめて!お願いだから……!!」  赤く染まった顔に涙を浮かべ、私の腕にすがり付いて必死に懇願する先輩。私よりも低い目線から上目遣いでこちらを見つめる潤んだ瞳に、ぞくぞくとした快感が背筋を走り抜ける。 「何でも言うこと聞くからぁ……!!」  ……ヤバイ。何なのこの子。鼻血出そう。  このか弱い小動物みたいな振る舞いが演技でも何でもなく、ガチで天然の資質によるものだということに、そしてそんな資質を兼ね備えた逸材を今、この私が手中にしているという事実に、震えるような愉悦を覚える。  ……しかし、この私相手にそんな言葉を吐いてしまうのは、些か発言が軽率に過ぎるのではなかろうか? 「……何でも?本当に何でも言うこと聞いてくれるんですか??」 「えっ?………あっ!」  『まずいことを言ってしまった』とばかりにさっきまで真っ赤にしていた顔を今度は一瞬で青くする。本当に感情が表に出やすい人だ。  しかし、その先輩の予感は決して間違ってはいない。このような台詞を私に対して投げかけることが、どれほど危険な行為であるかということを、先輩だってとっくに理解していたはずなのに。 「うーん……何でも、何でもかぁ……」  私は意地の悪い笑みを顔に浮かべて、わざとらしく悩んでみせる。 「いやっ、その……何でもって言っても、できることには限度があるっていうか……」  おたおたと言い訳を重ねる先輩。だが今更何を言ってももう遅い。私はちょうど今思いついたと言う風を装って、前々から考えていたプレイを先輩に提案する。 「そうですねぇ……じゃあ、これからは私のこと『カナエお姉ちゃん』って呼んでもらえますか?」 「え、えぇっ……?!」 「それでぇ、喋るときは女の子らしい口調を意識すること。自分のことは『僕』じゃなくて『私』って言ってくださいね♪」 「そっ、そんなの無理だよ。大学のみんなに聞かれたらどうするのさ」 「いやいや、大学にいる間は今まで通りでいいですよ?私と二人きりで、しかも先輩が『女の子』になってる時は、先輩は私の妹で、私は先輩のお姉ちゃんっ♪ ねっ?いいでしょう?」  こんな馬鹿げたお願いでもこの先輩なら何だかんだで聞き入れてくれるかも、なんて少し期待していた私だったが、流石の先輩もこれをやすやすと受け入れるほどのお人好しではなかったようだ。 「い、いや。そんなの無理だって……だって恥ずかし過ぎるもん……。大体、女の子の格好してあげるのは今日だけっていう約束でしょ?そうしたらこの間の写真消してくれるって言うから、僕だってこんな恥ずかしい格好してあげてるのに……。僕だって宮崎さんの言うことなら何でも聞けるってわけじゃないよ。ていうか僕、宮崎さんより二つも年上なんだよ?それなのに僕が妹だなん……て…………」  長々とした言い訳を必死になってまくし立てる先輩。しかしここでようやく目の前に佇む後輩の異変に気が付いたようだ。いつの間にか目にうっすらと涙を浮かべ、細かく体を震わせている私を見て、先輩は口をぽかんと開けたまま、言葉を失ってしまった。 「先輩ひどい……何でもするって言ったのに……」 「えっ、いやっ、あのっ………」 「もちろん私が先輩に『お姉ちゃん』って呼ばれてみたいって気持ちもありますよ?でも、これは先輩のためでもあるのに……」 「えっ、えっ」  急にしゅんとして勢いを失ってしまった私の姿(もちろん演技)に驚き、うろたえる先輩。 「先輩さっきから自分のことを僕、僕って……女の子の格好してるのに街中でそんな言葉遣いしてたらおかしいじゃないですか」 「だ、だって、そもそも僕は普通に、お、男だし……」 「ほら、今横を通ってった人、びっくりした顔で先輩の方見てましたよ?そんな格好してこんな人の多い場所で『僕は男』なんて言ってたら目立つに決まってるじゃないですか」 「あ……」  しまった、という顔で再び顔を赤らめる先輩。 「だから、女の子の格好してる時はちゃんと女の子らしい口調をした方が良いって思ったんです。それなのに、先輩ったらさっきからワガママばかり言って……」 「あっ……ご、ごめん……」  自分より背が高く大人びた容姿をしているとはいえ、年下の女の子を泣かせてしまったことに罪悪感を感じた先輩の心は、すっかり萎縮してしまったようだった。  あまりにもわかりやすい先輩の行動を見て思わず笑いがこみ上げてきそうにもなるが、何とかそれを飲み込んで、そのまま演技を続ける。 「それに、自分のことを男の子だと思うから恥ずかしいんです。女の子だと思い込んでしまえば恥ずかしくないですよ。だって女の子が女の子の服着るのは当たり前のことなんですから。だから、私は先輩のお姉ちゃんで、先輩は私の妹っていう設定を演じ切っちゃえば恥ずかしくないし、先輩の負担もちょっとは軽くなるかもって思ったんです。それなのに、先輩は私の気持ちも知らないで駄々こねてばっかりで……」  我ながらとんでもない理屈だとは思うが、後輩女子の目に浮かぶ涙にすっかり怯えきってしまった先輩には、もはやその詭弁に正面切って反論する心の余裕などないようだった。 「そ、そっか……。いや、でも、だからって僕が妹になる必要は……」 「先輩、さっきの言葉は嘘だったんですか?私は先輩のことを想ってこういう提案をしているのに……先輩はそんな風に平気で嘘をついて、私の気持ちを無下にするんですか?」 「う、ううぅ……!」 「わかりました……先輩がそんな最低の人だったなんてがっかりですけど、仕方がないですね……くすん」  見る人が見ればあまりにも見え透いた嘘泣き。そんな三文芝居ですらもこの単純な(良く言えば純粋な)性格をした先輩を手玉に取るには十分すぎる。 「……うぅ、わ、わかったよ!僕が妹で、宮崎さんがお姉ちゃんで………それでいいからぁっ!!」  やった。あまりにも突飛なお願いだったが、先輩がそれを承諾したことに気を良くした私は途端に態度を翻し、半ば上から目線の強い口調で先輩に言い聞かせる。それはまるで本当に出来の悪い妹を叱る、しっかり者の姉のような口ぶりで。 「『宮崎さん』ってだぁれ?『カナエお姉ちゃん』でしょ?」 「うっ……か、カナエ……お、お、お姉、ちゃん……」 「自分のことは『私』。それか……うーんそうだなぁ。『ミキ』って言っても良いですよ?」 「ミ、ミキ……?」 「ミキタカだから『ミキ』です。先輩の女の子ネーム。可愛くて素敵じゃないですか♪」  これは本当に咄嗟に思いついたことだったが、自分でも悪くない案だと思う。 「そ、そんなぁ……別にそこまでしなくても……」 「つべこべ言わないっ!『私はカナエお姉ちゃんの妹のミキです』って言ってごらん?」 「……っ」 「ん?お姉ちゃん聞こえないなぁ〜。あの恥ずかし〜い写真、大学中にバラまかれてもいいのかなぁ〜?」 「…わ、わ、わ………」 「大きな声で!」 「………わっ!私はっ、か、カナエお姉ちゃんの妹のミキですっっ!!!!!」  そこまで大声で言わなくてもいいのにってくらい、声を張り上げて自己紹介する先輩。いや、ミキちゃん。 突然道端で声を張り上げて自らの名を名乗った少女の姿に、道行く人たちが何事かと振り返る。 「はーいよくできました。ミキちゃんはお利口さんだねぇ?周りのお兄さんお姉さんたちにも大きな声で自己紹介できたねぇ♡」 「ぅあぁっ……うぅあうぅっ……!」  不本意にも周囲の注目を集めてしまった事で、先輩は顔から湯気が出そうなくらいに真っ赤になり、たっぷりとした涙をそのつぶらな瞳に溜めて俯いてしまった。無意識から来る行動だろうが、先輩はいつの間にか私の服の裾をぎゅっと握りしめている。そのいじらしい姿はまるで寄る辺を求めて母親にすがり付く恥ずかしがり屋の少女のようで、あまりにも愛くるしい先輩の行動に私もつい興奮し、息が荒くなってしまう。 「……もっ、萌え殺す気ですか……」 「………えっ?」 「い、いや、何でもないですよー。さあっ、行こうか♪ ちゃんとお姉ちゃんのあとに付いて来るんだよ?」  羞恥に身悶える先輩の姿を鑑賞するのもそこそこにして、私は妹を立派に先導する良き姉を演じながら、再び通りを歩きだす。 「…………」  未だに私の裾にすがり付いたまま、半歩後ろに付いて歩く先輩。 「ミキちゃん、そんなにくっついてたら歩きにくいよ」 「うぅ……ま、まだどこかに行くの……?」 「当たり前じゃない。デートはまだ始まったばかりなんだよ?さあ、どこに行って何しようかな〜♪」  今やすっかりおとなしくなってしまった先輩は、とぼとぼとうつむきながら私の後をついてくる。公衆の面前で「妹宣言」をさせられたことで、先輩の中にわずかにあった私への反抗心は今やすっかり鳴りを潜め、ついでに妹としての服従心までもが心の奥底に埋め込まれてしまったみたいだった。  それに……ふと気が付くと、いつの間にか先輩はワンピースの股間の辺りをぎゅっと手で押さえ、不自然な前かがみの姿勢で歩いている。 ……ふふ。先輩ったら、本当にどうしようもない変態さんなんだから♡  先輩のぎこちなく不自然な仕草と、その行動をもたらす生理的な理由に気が付いた私は歩みを止めて振り返り、先輩の耳元に口を近づけてそっと囁く。 「みんなに見られながら妹扱いされておちんちん大きくしちゃうような、変態女の子にぴったりの下着でも、買ってあげようかな♡」 「〜〜〜〜〜っっ!!!」  街中で女装姿(しかもノーパン)で勃起してしまっていること、そしてそうなってしまった恥ずかしすぎる理由を私に言い当てられてしまった先輩は、もう自分でもどうしたらいいのか、わからなくなってしまったのだろう。もはや人目を気にする余裕もなく、そのまま道端にしゃがみ込んでしまった。  ……やれやれ。いちいちこの調子で歩いてたら、あっという間に日が暮れちゃいそうだなあ。  などと考えながらもこの状況を最大限に楽しんでいるのは他ならぬこの私自身だ。とりあえず先輩のいきり立った股間のモノが落ち着くのをしばらく待ってあげることにしよう。

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